研究実績の概要 |
28年度はアフィン曲線でのヤコビの逆問題の精緻化に集中し、特異曲線を正規化することで得られる空間曲線に対するσ関数の研究から開始する計画を申請時に立てた。その計画に従い、無限遠点をWeierstrass点とする点付リーマン面でかつ、Weierstrassの正規形式と呼ばれる代数方程式に従う代数曲線でのヤコビの逆問題に関する研究を実施した。特に、対象とした曲線は、(p,q,r)型の曲線、つまり、3次元のアフィン空間曲線で無限遠点のWeierstrass非ギャップが、数値半群<p,q,r>で構成されるものであった。更にp=3となる曲線で、巡回群の作用が大局的に存在する曲線を詳しく調査した。 共同研究者である米田二良教授(神奈川工科大学)との研究打ち合わせを、数学会(秋と春)を利用して実施し、議論が深まった。また、数値解析ソフトウエアMapleなどの研究環境の整備により、様々な数値実験や考察が可能となり、具体例、数例の構築ができた。 それに先立ち、前年度投稿し、出版された論文 (Arch. Math. (2016) 107:499-509)の結果に従い、また上記研究の進展により、リーマン定数や、アーベル写像をシフトすることにより、上記の(3,q,r)型の曲線に対して、σ関数が定義できることを示した。さらに、ヤコビの逆問題に関しても、明解に提示でき、多くの知見を得た。現在、研究論文を執筆中で、29年度夏には、雑誌に投稿予定である。計画通りに進行している。 また、アーベル関数論には直接関連しないが、「量子ウォークと光学現象の研究」(arXiv:1610.02393)や「結晶のらせん転位の代数構造に関する研究」(arXiv:1605.09550)、「ロボティックスにおけるCagingの幾何学的研究」(arXiv:1701.02246)は、研究内容がアーベル関数論へのフィードバックも期待されるため、研究を実施しプレプリントとして公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに推移している。 具体的には、28年度の計画に従い、無限遠点をWeierstrass点とする点付、リーマン面でかつ、Weierstrassの正規形式と呼ばれる代数方程式に従う代数曲線でのヤコビの逆問題に関する研究を実施した。出版された論文 (Arch. Math. (2016) 107:499-509)の結果に従い、また上記研究の進展により、リーマン定数や、アーベル写像をシフトすることにより、(3,q,r)型の曲線に対して、σ関数が定義できることを示した。さらに、ヤコビの逆問題に関しても、当初、計画していたものより、明解に提示できた。研究論文は現在、執筆中であり、29年度夏には、雑誌に投稿予定である。 また、研究は、29年度実施予定である特異曲線でのσ関数に関するものに移行する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、28年度に得られた結果を基に、申請時に述べたアフィン曲線でのアーベル関数、σ関数の代数構造及び微分構造の解明に集中する。特に、代数曲線のモデュライ空間での特異曲線の周りでのσ関数のモデュライパラメータに関する振る舞いを、より精密に検討する計画を申請時に立てた。計画に従い、 (3,4)平面曲線と(3,4,5)空間曲線に対するそれぞれのσ関数について詳細に、その様子を研究する予定である。 但し、当初、予定をしていなかったが、超楕円曲線に関しては、ウクライナのLeykinらが、特異超楕円曲線でのσ関数の振舞に関しての研究を行い、論文を公表しているので、その結果との対比なども実施したいと考え、ウクライナの研究グループと議論を始めている。
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