研究実績の概要 |
29年度の前半は計画に従い、Weierstrass正規形式の巡回型の3次曲線に関する研究に集中し、σ関数のヤコビの逆問題について解決した。29年11月にLett. Math. Phys. に投稿し、微小修正を行えば掲載可能という通知を得ており、同時にarXivに公開している。arXiv:1712.00694 また、5月に日本数学会より依頼があり、9月の山形大学での日本数学会の代数幾何の分科会にて、特別講演として、「Euler-Bernoulli の弾性曲線(elastica) とその一般化:楕円関数の萌芽からアーベル関数論の再構築へ」とする講演を行った。 また、後半はやや遅れ気味であるが、(3,4)曲線が退化しその正規化が(3,4,5)曲線となる様子を数学的に明らかにすべき研究を行った。その結果は、広島大学で行われた研究会 Branched Covering, Degeneration and Related Topics 2018において、2018年3月5日に"Sigma function of y^3 = x^2(x - b1)(x -b2)"とする発表で概要を述べた。 いずれも、神奈川工科大の米田教授、Boston大学のPreivato教授と議論を行い遂行している。また、退化に関する研究では、京都産業大学の青本和彦教授に積分に関する議論に関して手助けをして頂いた。 また、数学の現実への応用として、量子ウォークと光学との関係を横国大の今野教授、井手氏、三橋教授と、ロボットに関わるものを槙田氏、濱田氏と、グラフのζの炭素系への応用を佐藤教授と、それぞれ論文を執筆し、それぞれAnn. Phys., J. Geom. Symm. Phys., Phys. Lett. Aに掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
一般の閉リーマン面に関するヤコビの逆問題の研究が、Previato教授の65歳の記念書籍へ執筆依頼を機会に新たに加わった。そのため、30年度は、(3,4,5)曲線に関わる退化の現象と,一般の閉リーマン面に関する研究を行い、後者は8月までに論文として投稿する予定であり、前者は12月頃投稿を目指す。 また、Springer社と近代数学社からそれぞれ本研究テーマに関わる書籍の出版の依頼があり、前者は構想を練っている段階であり、後者は一部執筆を始めた状況である。これに関しては、本研究を内外の研究者と共有するため、また、知見の社会への還元として優先度の極めて高いものと考えており、優先度を上げて推進してゆく。 そのため、当初の計画で30年度の主に研究予定であった戸田格子に関する議論は種数1のものに限定し、書籍の中でその成果を提示することを目指すことにする。
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