研究課題/領域番号 |
16K05192
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
今村 卓史 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (70538280)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 確率過程 / 可積分系 / 排他過程 / マクドナルド多項式 |
研究実績の概要 |
相互作用する確率粒子系の中には、ヤン・バクスター関係式やマクドナルド多項式と関連する特別な数理構造を持つことによって、粒子の流れや位置等の分布関数の具体的な表示が得られるものが存在している。これらを解析する分野のことを可積分確率論(integrable probability)と呼び、近年活発に研究が行われている。平成30年度は、東京工業大学の笹本智弘教授と共同で、可積分確率論の代表的なモデルの一つであるq-完全非対称排他過程(q-TASEP)に関する研究を行った。q-TASEPにおいて、粒子位置の分布を求める際、粒子位置のq変形されたモーメントの積分表示に着目する方法が代表的なものであるが、定常状態やランダムな初期条件の場合、モーメントが発散するという困難が知られている。我々は、このq-モーメントを用いず、二つの公式(ラマヌジャンの和公式やコーシー行列式の楕円関数版)を用いて粒子位置の分布を求める手法を開発し、定常q-TASEPに適用した。またランダムな初期条件におけるq-TASEPについて、上の二つの公式を用いず、より初等的に粒子位置の分布関数を求める手法を開発した。さらに笹本氏と東京工業大学のMatteo Mucciconi氏と共同で、高スピン頂点模型と呼ばれるq-TASEPを特別な場合として含むより一般化されたモデルにおいて、定常状態における粒子位置の分布関数の具体系を導出した。また笹本氏とサクレー(フランス)のKirone Mallick氏と共同で、可積分確率論の手法を用いて、対称単純排他過程における粒子位置の大偏差関数の具体系を導出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々なモデルに潜む、行列式構造がどのように現れるかを明らかにすることができ、それによって、粒子位置の分布関数の行列式表示等の具体的な成果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
q-TASEPや高スピン頂点模型等のモデルにおいて、粒子位置の分布関数は一つのフレドホルム行列式で書けることが知られている。フレドホルム行列式は自由フェルミオンのモデルに現れる数理構造であることが知られている。今後の課題としては、上記の可積分確率論のモデルと自由フェルミオン特にその代表的なモデルであるシューア過程との関係を明らかにすることが挙げられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 他の財源がありそちらを優先的に使用したため。 計画:出張旅費、パソコン、ソフトフェアの購入に使用する予定である。
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