研究課題
分布関数、相関関数、大偏差関数等を具体的に求めることの出来る確率過程の背後に現われる可積分な数理構造に関する研究を行った。q-Whittaker測度はMacdonald多項式の特別な場合であるq-Whittaker関数の2つの積で表される確率測度であり、このような確率過程において重要な役割を果たす。この測度に関するある期待値が単一のFredholm行列式で表されることが、Borodin-Corwinや我々の研究によって明らかになっている。2019年度はこのq-Whittaker測度とSchur測度との関係について研究を行った。ここでSchur測度とはSchur関数の2つの積で表される確率測度であり行列式点過程の代表的なモデルである。この関係性を利用することで、q-Whittaker測度に関するある期待値を行列式点過程というより単純なモデルの期待値にに変換できる可能性がある。本プロジェクト全体の成果は以下の通りである。1.上記のq-Whittaker測度に関するある期待値をRamanujanの和公式やFrobenius行列式を用いるというこれまでとは異なる手法で解析し、Fredholm行列式公式を導出した。この結果をq-TASEPと呼ばれる相互作用粒子系定常状態における粒子位置の揺らぎの解析に応用し、分布関数の具体形を得た。2.上記1.の手法を高スピン確率的頂点模型の高さ揺らぎの解析に応用し、高さ分布関数を厳密に導出した。3.非対称排他過程(ASEP)におけるモーメント公式の対称極限を考察することにより、対称単純排他過程(SEP)における大偏差関数を導出した。
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Probability Theory and Related Fields
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https://doi.org/10.1007/s00440-020-00966-x