研究実績の概要 |
・島内宏和氏と共同で,Beltrami方程式の新しい解法について2通りの方法でアプローチを行った.1つ目は Colin de Verdiere による,変分原理を用いたサークルパッキングの存在定理の証明を一般化したものである.もう一つは,Porter-島内によるBeltrami方程式の近似解法(線形方程式系と最小2乗法をミックスした手法)をベースに,コンパクトサポートをもつBeltrami係数に対するBeltrami方程式の解法を模索した. ・2017年9月に,東京工業大学にて「Beltrami方程式勉強会」を主催し,既存のBeltrami方程式の解法について体系的に学ぶ機会を設けた. ・Goldberg-Milnor予想へのアプローチとして,退化Beltrami方程式の解に収束すると期待される擬等角写像の列に対する考察をおこなった. ・木坂正史氏との共同で,2次多項式力学系族の分岐集合にあたるMandelbrot集合の境界に,Julia集合の擬等角写像(Beltra mi方程式の解となりうる写像)による像が埋め込まれており,その歪曲度としていくらでも1に近いものが存在することを示した. とくに,研究代表者は,歪曲度が1に近くなるだけではなく,埋め込みの逆写像がいくらでもアファイン写像に近くなるようにできることを示した. ・Yi-Chiuan Chen氏と共同で,カントール型の2次多項式力学系が退化してsemi-hyperbolicとよばれるクラスの2次多項式力学系が生成される現象について,正則運動の退化という形で定式化し,その速度評価を与えた. さらに,Mandelbrot集合内の双曲成分において,双曲的2次多項式が放物的2次多項式に非接的に収束する場合の正則運動についても考察し,同様の速度評価を与えた.
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