複素力学系の「放物的分岐」とは,複数の周期点が退化した状態である「放物的周期点」が,力学系を定める写像の摂動によって複数の周期点に分岐し,力学系の性質が変化する現象をいう.「放物的分岐」は力学系の構造安定性を阻害する典型的な要因であるが,1990年代, GoldbergとMilnorは摂動の方向を適切に選べば,放物的分岐がコントロールでき,力学系を安定に保ったまま変形できるであろうと予想した.本研究では,この予想の正否を「退化Beltrami方程式」とよばれる,複素構造の変形を記述するPDEの同相解の存在に帰着させる,というアプローチにより,既存の結果とほぼ同等の結果が得られることを示した.
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