現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一番の根拠は、有界区間上に於けるいわゆるトロピカル値分布理論が完成できたことである。その基礎となるアイデアがaffineの意味でのシフトを有界区間に対応させるべくmax-plus代数を用いたある特殊な一次分数変換を利用し、その意味でhyperbolicなシフト作用素を用いることであった。例えば、単位円板上で何某か最適なMoebius変換を用いて差分作用素の代替とするという考え方は従来からあった筈である。ただ、それが複素平面上でのシフト作用素に劣らず良い性質を有するという結果は未だ得られてはいないと思う。本研究課題ではそれを最終的な目標の一つと位置付けているが、そのための考察は大きくは進んでいない。それゆえに、今回、区分的線型な関数と言う極めて特殊な対象ではあるものの、実数全体で得られた諸結果に自然な形で対応するように有界区間上の結果が示されたことは、その目標に着実に近づいたとの実感がある。進展の度合いとその方向の何れも当初に期待したものに一致する。更に、差分作用素の有効性を解析数論的な観点で検証するという実験的な試みや、指数函数や楕円函数の超離散化の存在を根拠として、元の複素函数が持つ様々な特性を微分方程式や函数方程式を通して調査するという方向からの考察など、フィンランド(Janne Heittokangas, Risto Korhonen, Ilpo Laine)、中国(Nan Li, Weichuan Lin, Kai Liu, Zhi-Tao Wen)、アメリカ(Gary G. Gubdersen)そしてドイツ(Norbert Steinmetz)の研究者と連携研究者(Katsuya Ishizaki)との共同研究が着実に進展しており、そのうち現時点で計5編の論文を投稿できていることが進捗状況が上記区分に該当すると判断した理由である。
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