研究課題/領域番号 |
16K05198
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
山田 雅博 岐阜大学, 教育学部, 教授 (00263666)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放物型極大関数 / 放物型ハーディー空間 / トエプリッツ作用素 |
研究実績の概要 |
近年,ユークリッド空間の上半空間において定義された放物型ベルグマン空間という新しい関数空間が導入され,放物型ベルグマン空間について様々な研究がなされてきた。放物型方程式 L(α)u=0 の解 u を L(α)-調和関数と呼ぶ。放物型ベルグマン空間とは,L(α)-調和で,かつ上半空間において p-乗可積分な関数 u からなる空間のことをいう。特に,α=1/2 のときに調和関数からなるベルグマン空間に一致する。α=1/2 のときは特殊な場合であり,有用な性質が数多くあって研究しやすい。この概念をもとに我々は,放物型ハーディー空間の概念を導入した。本研究の目的は,n次元ユークリッド空間の上半空間において定義された放物型ハーディー空間について様々な方面から解析を行い,その空間の性質を明らかにすることである。L(α)-調和な関数からなる関数空間の解析において,重要な役割を果たすのは,放物型作用素L(α) の基本解である。特に,α=1/2 のときの基本解は,ポアソン核となることが知られている。それ以外のときの基本解については,具体的には記述されていない(ただし,α=1 のとき,L1 は熱方程式となるので基本解が記述できる)。本研究では,L(α)の基本解と n次元ユークリッド空間で定義された関数とのコンボリューションを考え,それを L(α)-調和な拡張関数と呼び,それらの関数の性質について研究した。特に,のちの研究で重要となって来るであろう放物型極大関数との関係や,ファトゥー型の境界極限存在定理などについては詳しく調べた。また,関連する作用素であるトエプリッツ作用素の不変部分空間の性質についても調べ,これらの研究成果は論文として,現在ある雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調和関数からなるハーディー空間で重要な研究対象となったのは,共役調和関数の性質であり,フェファーマンの研究が非常に良く知られている。共役調和関数と極大関数の性質は深く結びついており,様々な研究結果がある。ここでは,放物型ベルグマン空間において研究した放物型共役関数をモデルにして,放物型ハーディー空間においても同様の概念を持つ関数を定義し,それらについて研究する予定であった。これらについては,予定通りに進んでいる。また,調和関数からなるハーディー空間において,トエプリッツ作用素やハンケル作用素が詳しく研究されている。本研究でも,放物型ハーディー空間の解析を行ったあとで,それらの研究結果の応用例として,放物型ハーディー空間上でトエプリッツ作用素やハンケル作用素を定義し,それらに関する研究を行う予定であった。今年度は,トエプリッツ作用素の不変部分空間の性質について研究を行い,それらの結果を論文にまとめて投稿中である。以上から,おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究年度の最後の年度に当たる2019年度は,主に,放物型ハーディー空間上でトエプリッツ作用素やハンケル作用素を定義し,それらに関する研究を行う予定である。2018年度は,トエプリッツ作用素の不変部分空間の性質について研究を行い,一定の成果を得たと考えている。2019年度は,引き続きトエプリッツ作用素の有界性,可逆性,コンパクト性やその他の性質について調べる予定である。また,ハンケル作用素についても,有界性,可逆性,コンパクト性について研究を行う予定である。
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