調和関数からなるハーディー空間で重要な研究対象となったのは,共役調和関数の性質であり,フェファーマンの研究が非常に良く知られている。共役調和関数と極大関数の性質は深く結びついており,様々な研究結果がある。ここでは,放物型ベルグマン空間において研究した放物型共役関数をモデルにして,多重放物型ベルグマン空間の研究を行った。多重放物型ベルグマン空間は,大阪市立大学の西尾昌治氏と茨城大学の下村勝孝氏によって,近年定義され,それらについて研究がなされた。特に,多重放物型ベルグマン空間における再生核の性質について研究され,多くの有用な性質が明らかにされた。2019年度は,これらの研究結果をもとに,p=1 のときの多重放物型ベルグマン空間の双対空間の研究を行った。まず,多重ではない場合の放物型ベルグマン空間のp=1 のときの結果をもとに双対空間をどのように定義したら良いのかを研究し,整合的な定義を導き出した。また,導き出した双対空間と,多重放物型ブロック空間との関係性についても研究を行った。これらの研究結果は,p=1 のときの放物型ハーディー空間の解析にも大変に有用であろうことが予想される。この解析は,調和関数からなるハーディー空間においても大変難しい部分があり,p=1 のときの双対空間の研究結果として BMO が考え出された。放物型ハーディー空間においては,調和関数の有用な性質が使えないため,さらなる難しさが予想される。なお,p=1 のときの多重放物型ベルグマン空間の双対空間の研究の結果については,現在の時点では論文として,執筆中である。
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