研究課題/領域番号 |
16K05199
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
田中 直樹 静岡大学, 理学部, 教授 (00207119)
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研究分担者 |
赤木 剛朗 東北大学, 理学研究科, 教授 (60360202)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 勾配流 / 変分不等式 / 積公式 / 適切性 |
研究実績の概要 |
1. AGS 理論の深化を目指して-距離空間における勾配流に対する適切性の考察-について:距離空間における勾配流の適切性の問題を, 増大条件を組み入れた変分不等式の可解性の問題へと翻訳し考察した。また,距離空間における勾配流に対する積公式を導出し,それを汎関数の摂動に付随する勾配流への接近法へ応用した (Studia Math. (印刷中))。さらに, 研究分担者の赤木は, 単調成長を拘束条件に持つ勾配流の例として非斉次項付き拡散方程式に対応する問題の可解性や解の正則性・比較原理・長時間挙動を研究した他, 分数冪ラプラシアンの境界値問題に対する解の正則性理論や一般化された勾配流に対する変分原理について研究を行った。
2. 時間に依存する単調作用素, 劣微分作用素により支配される発展方程式の枠組みの拡張について:多方面からの考察として, カラテオドリー条件を満たす準線形作用素に支配される発展方程式の初期値問題に関する適切性定理を確立し, 原稿を執筆中である。また, 発展方程式の枠組みの拡張として, 遅れを考慮した非自励な方程式があり, これに関する従来の様々な研究を統一的に扱う理論の構築を目指し,スティルチェス積分により記述される積分方程式の最大解を利用した解の増大度条件を提案すると同時に,連続な有界変動関数を利用した連続率による方程式を支配する作用素の時間に関する連続性条件の下で,可解性を模索中である。さらに, 解の初期値に関する連続的依存性の観点では, 単調作用素理論が関数の差をノルムで評価するのに対して,距離を利用するものがリプシッツ作用素半群理論である。Kirchhoff 方程式の混合問題への近似可解性を視野に,微分作用素の性質からイメージしにくい連続性条件を満たす生成素のクラスを導入し,それにより生成されるリプシッツ作用素半群に対する積公式の導出を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は, [1] 時間に依存する単調作用素, 劣微分作用素により支配される発展方程式の枠組みの拡張, [2] 加藤の準線形理論の拡張-距離空間における微分方程式の適切性理論の構築に向けて-, [3] AGS 理論の深化を目指して-距離空間における勾配流に対する適切性の考察-の3つである。平成 28 年度に [2] に関する成果を, 平成 30 年度に [3] に関する結果をすでに得ている。関連する成果も原稿に整理しつつある。今年度が最終年度であるが, 課題 [1] に向けて, 多方面からの考察を加えているので, 成果を上げることができると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
「時間に依存する単調作用素, 劣微分作用素により支配される発展方程式の枠組みの拡張」について, 多方面からの考察として得られた成果「カラテオドリー条件を満たす準線形作用素に支配される発展方程式の初期値問題に関する適切性定理の確立」を起爆剤として, 計画で提案した枠組みをもとに,「非自励な方程式系の初期値問題の適切性」へ挑戦し, 望ましい成果を得たい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初予定していた共同研究者との研究打ち合わせが, 大学業務のため実施できず, 当該旅費を使用しなかったから。 (使用計画) 研究打ち合わせをメールによる連絡に替えることで, 計画の実行への影響は最小限にとどまった。次年度早々に, 研究打ち合わせを実施したいと考えている。
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