2000年ごろから,実解析学の分野では多重線形調和解析が盛んに研究されるようになり,この20年で基本的な理論は構築されたように思う.本研究では,双線形ヒルベルト変換の有界性などに代表される残された未解決部分に対し,どのようにアプローチすべきかを研究し,そして問題解決への糸口を見つけることを目標としている. 2019年度は,宮地晶彦氏(東京女子大学)と共に,双線形フーリエマルチプライヤー作用素の有界性に関する研究を行った.ルベーグ空間の枠組みでは,これまで,双線形作用素の有界性を保証するためのマルチプライヤーに課すべき正則性条件を弱める研究してきた.今回のテーマは,この弱い正則性条件下で,双線形作用素の定義域や値域として現れる関数空間を,ルベーグ空間からハーディー空間や BMO 空間に置き換えることが可能かどうかを研究した.特別な場合ではあるが,いくつかの結果を得ることができたので,それらをまとめた論文を現在投稿中である. また,加藤睦也氏(群馬大学)と宮地晶彦氏(東京女子大学)共に,Marcinkiewicz 型のフーリエマルチプライヤーに関する研究をスタートさせた.このタイプのマルチプライヤーは,線形と双線形の場合で大きいな違いがあり,非常に興味深いがその扱いは難しい.特に2019年度は,Grafakos-Kalton の先行研究を時間をかけて眺めなおした.今後とも Marcinkiewicz 型の研究を続けていきたい.
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