研究課題/領域番号 |
16K05208
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
濱名 裕治 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (00243923)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Ornstein-Uhlenbeck 過程 / ドリフト付ブラウン運動 / ベッセル過程 / Wiener sausage / 変形ベッセル関数 / 安定過程 / 到達時刻 / 推移密度関数 |
研究実績の概要 |
オルンスタイン・ウーレンベック過程の球面への到達時刻について,より一般的な設定であるラディアル・オルンスタイン・ウーレンベック過程にまで対象を広げ,前年度,到達時刻の分布関数および密度関数を第2種合流型超幾何関数とその第1パラメータに関する零点を用いて具体的に表示することに成功した.得られた結果を論文にまとめ,Studia Mathematica に投稿し,今年度,掲載が決定した.また,オルンスタイン・ウーレンベック過程に関する Wiener sausage の体積については,手掛かりに乏しく,年度内には進展しなかった. さらに,ベッセル過程の到達時刻の分布関数や Wiener sausage の体積の研究の遂行途中で,変形ベッセル関数の零点の分布状況が副産物として得られた.ベッセル関数の零点は指数に関して解析的であることがわかり,その結果を論文にまとめて Opuscula Mathematica に投稿し,今年度,39巻3号に掲載された. 一方,原点を出発するドリフトのないブラウン運動の球面への到達時刻の確率密度関数は,第1種ベッセル関数とその零点で表示されことが以前からわかっていたが,ドリフト付ブラウン運動の場合については未解決であった.この場合,到達時刻の確率密度関数が,ドリフトのないブラウン運動の球面への到達時刻の確率密度関数と第1種変形ベッセル関数の積で表示されることがわかり,得られた結果を論文にまとめ,日本学士院紀要に投稿した.95巻4号に掲載された. 今年度,多次元オルンスタイン・ウーレンベック過程を考える手がかりとして,ブラウン運動を一般化した安定過程について考察を行った.多次元の対称安定過程の半径方向の運動について,到達時刻の表示には至らなかったが,指数が1以上の場合の推移密度関数の積分表示と時刻に関する級数展開をえることができ,現在,論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
オルンスタイン・ウーレンベック過程に関する Wiener sausage の体積については,原点から出発するオルンスタイン・ウーレンベック過程が中心が原点でない球面への到達時刻の分布関数の情報が必要になる.その前段階として,オルンスタイン・ウーレンベック過程の半径方向の運動について考えたが,得られた結果を発展・応用させるアイデアが得られなかった.多くの文献を検索したが,必要な情報は皆無に等しいことがわかった. また,Wiener sausage の体積のエントロピー関数については,候補となる関数が得られているが,上からの評価ができただけで,下からの評価は未だ得られない.有効な方法も未だみつかっていない状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
オルンスタイン・ウーレンベック過程が中心が原点でない球面への到達時刻の分布関数については,関連する文献を1つだけみつかっている.そこでは安定過程を用いて記述されているため,安定過程に関する研究を行った後に,用いられている手法を分析して到達時刻の分布関数の表示に適用することを試みる. Wiener sausage の体積のエントロピー関数については,引き続き文献を検索を行い有効な手法を探る.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究集会の日程と大学での業務の日程の調整が難しく,成果発表のための出張があまりできなかったために次年度使用額が生じた.翌年度に繰り越した助成金は,成果発表のための出張旅費として使用する予定でいる.
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