オルンスタイン・ウーレンベック過程の球面への到達時刻について,より一般的な設定であるラディアル・オルンスタイン・ウーレンベック過程にまで対象を広げ,到達時刻の分布関数および密度関数を第2種合流型超幾何関数とその第1パラメータに関する零点を用いて具体的に表示した研究結果が,Studia Mathematica 251 巻 1 号に掲載された. 多次元オルンスタイン・ウーレンベック過程を考える手がかりとして,ブラウン運動を一般化した安定過程について考察を行い,前年度,多次元の対称安定過程の半径方向の運動について推移密度関数の積分表示と時刻に関する級数展開を与えたが,初等的な計算で導けることがわかり,論文執筆を中断した.その後,到達時刻の分布を調べたが,研究の進展はなかった.また,2階の楕円型微分作用素を生成作用素にもつ拡散過程に対する Wiener sausage の体積の漸近挙動についての文献を発見し,その論文を詳しく調べることがオルンスタイン・ウーレンベック過程に関する Wiener sausage の体積について解決の手掛かりとなると考えた.しかし,時間が大きくなるときの挙動を導くことができず,年度内で応用できるまで理解することができなかった. 一方,ブラウン運動に対する Wiener sausage の体積に関するエントロピー関数の表示にも取り組んだ.上からの評価は従来から得られていたので,同じ関数で下から評価することが必要になるが,満足いく結果は得られなかった.
|