研究課題
前年度までの研究で,一般の信号の瞬間振幅についての新たな不等式が得られ,周波数帯が狭い場合に瞬間振幅(解析信号の絶対値)が元の信号の粗い変動を表すことの数学的基礎づけの1つが得られていた.これをさらに発展させ,不等式に現れるノルムを多様化し,項の分け方を改良してより良い形にすることができた.また不等式に現れる定数の最適性について検討し,一部の結果が得られた.この際に計算した種々の例は,今後の最適性の研究の手掛かりにもなると思われる.これらの結果(の一部)は,応用数理学会2016年度年会において萬代が発表し,京都大学数理解析研究所で行われた国際会議(2016 RIMS Joint Research & CoopMath2016)においても発表した.信号源分離については,2015年度以前から,双直交の場合のスケーリング関数とウェーブレット関数のヒルベルトペアを元にした N分木離散ウェーブレット変換を使って,平行移動を含んだ混合画像の場合について,応用する試みをしていたが,さらにいろいろな場合をシミュレーションし,ある程度うまくいくことを確かめることができた.得られた成果の一部は 10th International ISAAC Congress (Macau) において2015年度に発表していたが,それを今回拡張し,線の要素を含む画像などの場合などもシミュレーションし,本の一部として発表した.また,複数のウェーブレット関数を用いた連続ウェーブレット変換を用いて信号源分離を行う研究について,2015年度に the 8th ICIAM (Beijing) で一部の概要を発表していたが,今回それを拡張して,本の一部として発表した.
2: おおむね順調に進展している
瞬間振幅に関する不等式について,より意味づけのしやすい形での表現や,定数の最適性について,今までより進んだことが分かった.信号源分離については,ウェーブレットの分数べきヒルベルト変換とそれに対応するスケーリング関数の研究結果を応用する試みがある程度うまくいっている.
瞬間振幅については,すでに得られた不等式の最適定数について調べるとともに,別の型の不等式について考察を進める.その他,以下の課題について昨年度に引き続き考察を進める.1. 解析信号を使った瞬間振幅・瞬間周波数の理論的正当性の検討 2. 帯域制限信号の空間と数列空間の同型性(サンプリング定理) 3. 信号源分離の原理についてまた,各種応用に現れる数学的問題(数学的にきちんと定式化・証明がされていない問題)について情報収集に努める.
海外出張に行く予定を取りやめ,大学での研究と国内での出張を重視したため,およびパソコン購入の時期を遅らせて次年度としたため,余裕が生じた.
新たな配分額80万円と合わせて,物品,旅費などに使用する.特に,パソコンの更新は新年度早々に行う.また,最初の予定より積極的に研究会に出席し,旅費に充てる予定である.
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Pseudo-Differential Operators: Groups, Geometry and Applications, Ed. by M.W.Wong, Hongmei Zhu, Birkhauser
巻: - ページ: 219-239
10.1007/978-3-319-47512-7_12
New Trends in Analysis and Interdisciplinary Applications --- Selected Contributions of the 10th ISAAC Congress, Macau 2015, Ed. by Dang, P., Ku, M., Qian, T., Rodino, L.G., Birkhauser
巻: - ページ: 579-583
10.1007/978-3-319-48812-7_75