本研究は,ソボレフ優臨界と呼ばれる非線形性が強い楕円型偏微分方程式において,球領域上のDirichlet問題の正値解の構造(分岐図式)を解明し,解の様々な性質を明らかにすることが目標である.90年代におけるBrezis-Vazquezの研究により,特異解の様々な性質が,解全体の構造と密接に関係していることが明らかにされていた.彼らの研究は先駆的であるが,現在の視点から見ると適用範囲(適用できる非線形項のクラス)が狭いため一般的な非線形項を扱うことができなかった.そこで,非線形項を一般化することが目標となった.本研究では,球対称解に制限することによって特異球対称解の詳しい性質を導くことが鍵となる.特に,特異球対称解の「存在」「一意性」「古典解の特異解への収束」の3つの性質を示すことが具体的な目標となった. 申請者による前年度までの研究で,非線形項の主要部が冪か指数関数の場合に,特異解の存在と収束が示されていた.また,冪の場合は特異解の一意性も示されていた.今年度進展があったのは次の3点である: (1) 非線形項の主要部が冪の場合に,特異解の存在・一意性・収束はこれまでの研究で既に得られているが,冪からの摂動のクラスをこれまでのものより少し広げても,特異解に関する同じ結果が成り立つことが示された. (2) 非線形項の主要部が指数関数の場合に,特異解の存在・収束はこれまでの研究で得られているが,一意性を新たに示した.さらに,指数関数からの摂動のクラスをこれまでのものより少し広げても,特異解に関する同じ結果が成り立つことが示された. (3) 当初の研究計画にはなかったが,非線形項の主要部が負の冪を持つものや,それを摂動した場合も,正の冪の場合とある程度共通の性質を持つことを明らかにした.
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