研究実績の概要 |
水や油などの粘性のある縮まない流体(非圧縮性粘性流体)の運動を記述する非圧縮性Navier-Stokes方程式の解の正則性に関して、関数解析学的手法および調和解析的手法を用いて研究を行った。ここで、非圧縮性Navier-Stokes方程式とは、流体の速度場u(x,t)と圧力場p(x,t)を未知関数とする非線形偏微分方程式系である。同方程式に関して、初期条件がある意味で大きい場合、なめらかな解が時間大域的に存在するかどうかは未解決な問題である。この問題に対して、Beale-Kato-Majdaの爆発判定条件が有名である。すなわち、時間区間[0,T)までなめらかな解が存在し、各時刻における渦度のsupremum normが区間[0,T)上で可積分であれば、なめらかな解が時刻Tより先まで延長できることが知られている。このBeale-Kato-Majdaの爆発判定条件は、流体の存在する領域が全空間の場合、多くの改良がなされている。例えば、supremum normの代わりに、BMO-normやBMOより広いBesov空間のnormを使っても同様のことが言えることが証明されている。しかし、一般領域上では、この種の研究はあまりない。私は、同様の改良が全空間のみならず、もっと一般の領域(例えば外部領域や有界領域、半空間など)でもできることを示した。特に、ある対数型の不等式(Brezis-Gallouet-Wainger型の不等式)の改良に成功し、それを用いることにより、これまで知られている結果の改良に成功した。また、エネルギークラスに属さない解を扱っている点で、考える領域が全空間の場合においてさえも、これまでの知られている結果の改良になっている。
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