研究実績の概要 |
平成28年度に引き続き、平成29年度も水や油などの粘性のある縮まない流体(非圧縮性粘性流体)の運動を記述する非圧縮性Navier-Stokes方程式の解の正則性に関して、関数解析学的手法および調和解析的手法を用いて研究を行った。ここで、非圧縮性Navier-Stokes方程式とは、流体の速度場u(x,t)と圧力場p(x,t)を未知関数とする非線型偏微分方程式系である。同方程式に関して、初期条件がある意味で大きい場合、なめらかな解が時間大域的に存在するかどうかは未解決な問題である。この問題に対して、Beale-Kato-Majda型の爆発判定条件及びSerrin型の爆発判定条件が有名である。平成28年度はBeale-Kato-Majda型の爆発判定条件を考察したが、平成29年度はSerrin型の爆発判定条件を考察した。時間区間[0,T)までなめらかな解が存在し、各時刻における速度場uのsupremum normが区間[0,T)上で2乗可積分であれば、すなわち、uがL^2(0,T;L^{\infty})に属していれば、なめらかな解が時刻Tより先まで延長できることが知られている。これはSerrin型の爆発判定条件の特別な場合である。我々はこの条件を少し緩めることに成功した。具体的にはsupremum normよりも弱いノルムである重み付きMorreyノルムを用いた条件に変更することに成功した。この種の改良に関して、扱う領域が全空間の場合には、多くの研究があるが、我々は外部領域などの一般的な領域でも、この種の改良に成功した。さらに、エネルギークラスに属さない解を扱っている点でも、考える領域が全空間の場合においてさえも、これまでの知られている結果の改良になっている。
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