研究実績の概要 |
令和元年度も水や油などの粘性のある縮まない流体(非圧縮性粘性流体)の運動を記述する非圧縮性Navier‐Stokes方程式の解の正則性に関して、関数解析学的手法および調和解析的手法を用いて研究を行った。ここで、非圧縮性Navier‐Stokes方程式とは、流体の速度場u(x,t)と圧力場p(x,t)を未知関数とする非線型偏微分方程式系である。同方程式に関して、初期条件がある意味で大きい場合、なめらかな解が時間大域的に存在するかどうかは未解決な問題である。この問題に対してBeale‐Kato‐Majda型の爆発判定条件を考察した。Beale‐Kato‐Majdaの爆発判定条件とは、時間区間[0,T)でなめらかな解が存在し、各時刻における渦度のsupremum normが区間[0,T)上で可積分であれば、すなわち、渦度がL^1(0,T;L^{\infty})に属していれば、なめらかな解が時刻Tより先まで延長できるというものである。平成30年度は時間変数に関してL^1‐normではなく、logの重みを付けたものに変更することに成功したが、令和元年度には、時間変数はL^1-normのままにして、空間変数に関するsupremum normを弱めることに成功した。具体的には、Vishik型のノルム空間を導入し、Beale‐Kato‐Majdaの爆発判定条件を改良した。もともとのVishik型ノルムはL^{\infty}ノルムを用いて定義され、同空間はL^{\infty}より広い空間であるが、私は、L^{\infty}ノルムの代わりにBMOノルムを用いた改良型のVishik空間を導入し、それを用いることにより、Beale‐Kato‐Majdaの爆発判定条件の改良に成功した。
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