研究課題/領域番号 |
16K05233
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
観音 幸雄 愛媛大学, 教育学部, 教授 (00177776)
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研究分担者 |
桑村 雅隆 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30270333)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 2種競争系 / 球対称解 / 解構造 |
研究実績の概要 |
本研究では,重定・川崎・寺本(1979)により提案された個体群密度に依存する非線形な拡散を伴う2成分反応拡散系(2種競争系)を研究対象とし,その非負な定常解および周期解の解構造の理解を主な研究目的としている.今年度は,交叉拡散係数が他のパラメータに比べて非常に大きい場合に,2種競争系から縮約される反応拡散系について考察した. 今年度の研究では,2種競争系の定常問題を,線形拡散を伴う通常の反応拡散系の定常問題に帰着するために,交叉拡散係数を含む非線形な変数変換を行い,さらに変換後の系に対して交叉拡散係数を無限大とした極限系について調べた. 最初に,この方法を適用し,交叉拡散係数の一つを無限大とした場合に,Y. Lou と W.-M. Ni の論文(1999)で既に示されている2種類の縮約系を導出できることを確認し,それぞれの系が記述している解の性質を理解した. 考察対象の2種競争系は生物の棲分け現象を理解するために提案された反応拡散系であり,相手の個体群密度が高くなればなるほど,その場から離れる確率が高まる拡散効果が2種競争系には組み込まれている.交叉拡散係数を直線に沿って無限大にする場合にこの方法を適用すると,昨年度調べた種間競争係数を大きくした場合に現れる極限系(Dancerら(1999)が導出した系)と同じ系が得られた.このことから,交叉拡散係数をともに大きくすると,非線形な拡散効果として考察対象の2種競争系に元々組み込まれていた生物の棲分け現象が出現することが分かった. これまでに得られた研究成果をまとめて,京都大学数理解析研究所および愛媛大学で開催された研究集会において口頭発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交叉拡散係数や種間競争係数を無限大とした場合についての極限系をいくつか得ることができたが,各極限系の解構造についてはまだ完全に理解できていない.特に,昨年度得られた反応拡散系(B)については,あまり研究が進んでいない.また,時間周期的で空間的に非一様な解については数値計算により確かめているが,未だに数学的な結果が得られていない.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,昨年度得られた反応拡散系(B)を解析し,種間競争係数が他のパラメータに比べて非常に大きい場合について,2種競争系の正値定常解の解構造を調べる.また,数値計算で確認できている時間周期的で空間的に非一様な解について,反応拡散系の定常解や進行波解の解構造を数値的に計算できるAUTOを用いて,2種競争系およびその極限系に対して解構造を数値的に調べる.さらに,安定性を調べるために,種間競争係数や交叉拡散係数を大きくした場合に,対応する極限系の解に漸近するのかどうかについて数値的に調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に国際研究集会(台湾)で研究発表することが予定されているため,平成29年度は助成金の使用を控え,平成30年度に海外出張旅費として使用することにした.
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