研究課題/領域番号 |
16K05235
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
小野寺 栄治 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 准教授 (70532357)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分散型偏微分方程式 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、実2次元球面やそれを一般化したある種のリーマン多様体に値を取る曲線や写像がみたす分散型偏微分方程式の具体例に対して、初期値問題の解法研究を行った。
1.昨年度の研究において、コンパクトな局所エルミート対称空間に値を取る閉曲線流がみたすある4階非線型分散型偏微分方程式を考察し、その初期値問題の時間局所解が存在することを明らかにした。この偏微分方程式はいわゆる2重シュレーディンガー写像流方程式と一致する。解の空間変数の定義域が高次元トーラスの場合も時間局所解が存在するか検討を行ったが、現時点では見通しが立っておらず、次年度以降に改めて考察を試みたい。
2.山﨑遥氏(高知大学大学院修士課程1年)と、実2次元球面に値を取る曲線流がみたすある5階の非線型分散型偏微分方程式に対する初期値問題を考察した。この偏微分方程式は、1次元のハイゼンベルグスピン系の連続体近似モデルを含む完全可積分系方程式の系列の一つである。この系列のうちで4階までの偏微分方程式については先行研究において初期値問題の解法が与えられている。本研究では、これらの先行研究の方法に習って、上記の5階の偏微分方程式に対する初期値問題を考察した。その手始めとして、解の空間変数の定義域が実数直線の場合、すなわち閉じていない曲線流の場合を考察し、分散型偏微分方程式の解の平滑化効果を利用することにより、時間局所解の存在と一意性が従うことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は研究実績の概要の1で述べた研究を進める計画であったが、2で述べた研究を優先的に進めることになった。2で述べた研究については、一定の成果が得られた。昨年度までの研究の蓄積があったため、順調に研究を遂行できたと思われる。一方で、得られた結果は限定的な設定下でのものであり、結果自体も想定の範囲内にとどまっている。これに関連して新たな課題も見つかり、今後の研究の展開も期待される。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要の2で述べた5階の分散型偏微分方程式に対する研究をさらに進める。 余裕があれば、研究実績の概要の1で述べた4階の分散型偏微分方程式に対する研究も進める。難航する場合は、高次元トーラスの前に高次元ユークリッド空間上の写像流の場合から考察することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に是非とも参加したい研究集会が新規に開催されることがわかり、当初想定していたよりも多くの旅費が必要になったため、そのぶんの額を残して次年度の使用に充てることにした。
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