研究実績の概要 |
半線形楕円型偏微分方程式をその領域が球と円環領域の場合について研究した. 球対称な正値解の存在を証明した. 非線形項の前に正のパラメーターがついている場合であり, また, semipositone と呼ばれる非線形項についての研究を行った. この条件は, 非線形項がf(0)<0の条件を満たす場合である. このときは, 最大値原理を使っても, 解の正値性が保証されない. すなわち, 非負値解が必ずしも正値解にならない. そのために, 方程式の解析が複雑になり, 解の正値性を証明することが非常に困難になる. 本研究では, 非線形項についての一般的で, かなり弱い仮定の下に, パラメーターが十分大きい場合に, 正値球対称解が存在することを証明した. パラメーターが小さいときは, 正値球対称解が存在しないことを証明した. 正値球対称解の周りでの線形化作用素が正の第1固有値を持つことを証明した. 従って, 求めた解は, 安定な定常解となる. 証明の手法はラグランジェ汎関数を使った変分法に基づくものである. ラグランジェ汎関数を最小にする関数が存在することを証明した. それが考えている方程式の正値球対称解になることを証明した. 本研究は, 韓国, Keimyung University のEunkyung Ko教授との共同研究に基づくものであり, これらをまとめて, 論文とした. 得られた結果を査読付き論文として専門誌に投稿し, 出版予定である. また, 7月にオランダでの国際学会で, 10月に韓国での国際学会で講演発表を行った. 9月に日本数学会で, それ以外に国内の研究集会4回の講演発表を行った.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は, この科研費の研究の最終年度であるから, 現在までの結果を総合的にまとめ上げて, 学会や研究集会で研究結果を発表して, 他の研究者の評価を受ける. これにより自分の研究水準がどのような位置にあるかを知ることができる. またその際に, 他の数学者と情報交換をして, 現在の数学の方向を知るとともに, 自分の数学の材料と情報を集める.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により, 予定されていた研究集会が中止され, 研究打ち合わせができなくなった. そのため, 研究が遅れ, 当初の研究計画通りの結果を得ることができなかった. このため次年度使用額が生じた. これは, 次年度の研究集会への参加の旅費として使用する.
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