研究実績の概要 |
2階の常微分方程式の1種である Moore-Nehari 微分方程式について研究した. この微分方程式は, 非線形項の係数関数が, 不連続な偶関数となっている. この微分方程式の区間(-1,1)における2点境界値問題を研究した. 解が偶関数または奇関数であるときに対称な解と呼ぶ. 非負整数 n に対して, Moore-Nehari 微分方程式の解が区間(-1,1)において, ちょうどn個の零点を持つときに, n-nodal 解と呼ぶ. この研究において, 任意の非負整数 n に対して, u'(-1)>0 を満たす n-nodalな対称解の存在と一意性を証明した. 非負整数m,nに対して, Moore-Nehari 微分方程式の解が区間(-1,0)にちょうどm 個の零点をもち, なおかつ区間(0,1)にちょうどn 個の零点を持つときに(m,n)解と呼ぶ. この研究において, 任意の非負整数 m,nに対して, (m,n)解が存在することを証明した. 従来では, n-nodal 解の存在に関する研究がほとんどであり, (m,n)解に関する研究は, なかった. 従って, 本研究はきわめて独創的な研究であり, 解空間の多様性を表すものである. ある半線形楕円型偏微分方程式に対して, 領域が球と円環領域の場合を考察し, 正値球対称解の存在を証明した. 非線形項に対する仮定が, 従来研究されている物より非常に弱い仮定であり, なおかつ一般的な条件の下に正値球対称解の存在を証明した. また, 得られた正値球対称解での線形化作用素の第1固有値が非負であることを証明した. ラグランジェ汎関数の最小点として正値球対称解を得ている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は1編の論文が査読付きの専門誌に掲載された. 2021年度は, 新しく1編の論文が査読付き専門誌に掲載予定である. これらの結果を国際学会で講演発表する予定であったが, 新型コロナウイルスの影響で国際学会は中止となった. また国内の研究集会は, オンラインでいくつか行われた. 日本数学会で2回の講演をオンラインで行った. また, 京都大学数理解析研究所でのオンラインの研究集会でも講演発表を行った. 研究は概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
1. 現在までに得られた研究成果を精査し今後の研究の基礎とする. また海外の研究集会(対面またはオンライン)に出席し, 自分自身の研究成果を発表することにより, 他の研究者の評価を受ける. これにより自分の研究水準が世界的基準からどのような位置にあるかを知ることができる. またその際に, 外国の数学者と情報交換をして, 現在の世界の数学の方向を知るとともに, 自分の数学の研究材料と情報を集める. 2. 国内の研究集会(対面またはオンライン)に出席して, 自分の研究成果を発表する. またその際に, 共同研究者と研究打ち合わせを行い, 今後の研究の進め方について討論し, 情報交換をする.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は, コロナウイルスの影響で国内及び海外の研究集会が少なく, 出張費にあまり科研費を使わなかったために次年度使用額が生じた. 来年度は, 研究資料として, 多数の文献と書籍を購入する. 次年度使用額は, これらに使用する予定である.
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