研究実績の概要 |
本研究課題2年目に当たる平成29年度は, これまでの研究に引き続き圧縮性Navier-Stokes方程式や離散Boltzmann方程式などの気体運動のモデル方程式を研究対象とし, 粘性衝撃波などの非線形波の存在性及び漸近安定性に関する研究に取り組んだ. 具体的には熱流を考慮に入れた単独の保存則とCattaneo則に基づく方程式を組み合わせて得られる緩和的双曲型連立偏微分方程式系に対して, 1次元全空間における粘性衝撃波の存在性と漸近安定性の数学的証明を与えることに成功した. 本結果に関連するこれまでの研究結果では, 熱流にFourier則を与えて得られる単独粘性保存則に対しては粘性衝撃波の漸近安定性など数多くの結果が得られていたが, Cattaneo則に基づく連立系に対して同結果を示したのは本研究が初めてである. まず粘性衝撃波の存在性については, 1階の常微分方程式に帰着させることで示した. その際Laxの衝撃波条件が解の存在性を導く重要な条件であることを確認した. なお衝撃波の進行速度は緩和時間には依存せず, Fourier則に基づく単独粘性保存則の場合と同じ値になることを発見した. 漸近安定性については粘性衝撃波からの摂動に対して, 適当なSobolev空間における時間一様なアプリオリ評価を導出することにより証明した. 計算手法は摂動の積分量に対するエネルギー法による. さらに単独粘性保存則に対する重み付きエネルギー法を応用することにより, 時間漸近率の算出にも成功した. Cattaneo型方程式系において緩和時間のゼロ極限を行うと, 形式的にFourier型の単独粘性保存則が得られる. この極限は初期層を生じる特異極限となるため, 解の収束性は決して自明ではないが, 本研究ではCattaneo型の解は緩和極限をとることでFourier型の解に収束することも証明出来た.
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