研究実績の概要 |
研究課題「非線形微分方程式の定性解析の新機軸:非線形振動理論の新たな局面を迎えて」を遂行するために, 非線形 Sturm-Liouville 微分作用素あるいは中立型微分作用素を主要部とする様々な微分方程式や方程式系に対して, (a) 非線形微分方程式の振動性の特徴付け, (b) 非振動型の微分方程式に非摂動項を付加したときの影響, (c) 様々な微分方程式の非振動性を解析するための正則変動関数論の活用(代表的な関数: 緩変動関数, 正則変動関数, 急変動関数など) という主に3つの課題に焦点を当てた研究を実施した. [研究実施の具体的な内容] [1] 情報収集: 平成28年度は, 天体物理学に現れる劣線形版のEmden-Fowler方程式系に対して, 既に知られている先行研究の結果を体系的に纏め, 証明に利用されている数学的手法及び技術を分類し可能な限り情報を得る作業を行った. 情報の収集は, インターネットや他大学の図書館の利用及び関連の研究者からの助言を賜った. [2] 研究成果報告と論文策定: 研究経過を定期的にこの分野の世界的権威である草野尚教授(広島大学名誉教授, 福岡大学)とスロバキアの J. Jaros教授(コメニウス大学)に報告して批判と助言と求めた. [3] 平成28年11月に上記の Jaros教授を我が国に招聘し, 研究打ち合わせ及び論文策定を行った. [4] 研究成果発表: (1) 平成28年9月に関西大学で開催された「日本数学会秋季総合分科会(特別講演)」, (2) 9月下旬に島根大学で開催された「常微分方程式の定性的理論ワークショップ」, (3) 10月に富山大学にて開催された「富山解析セミナー2016」, (4) 11月に京都大学数理解析研究所で開催された「常微分方程式の定性的理論とその周辺」において得られた研究成果を発表し好評を博した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[主な研究成果] [1] J. Jaros, T. Kusano and T. Tanigawa, Regularly varying solutions with intermediate growth for a class of cyclic differential systems of the second order.(to appear) [2] J. Jaros, T. Kusano and T. Tanigawa, Characterization of nonoscillatory solutions of first order functional differential systems of Emden-Fowler type. (in preparation), [3] Tomoyuki Tanigawa, Asymptotic analysis of positive solutions of a class of nonlinear differential equations in the framework of regular variation, 京都大学数理解析研究所「常微分方程式の定性的理論とその周辺」, 数理解析研究所講究録 (to appear). 上記の通りの研究成果を収めている. これらの研究成果を各研究集会において発表し, 他の研究者から助言と批判を受けている. 以上のことから研究は概ね順調にしていると考えられる.
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