研究課題/領域番号 |
16K05242
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
谷島 賢二 学習院大学, 理学部, 教授 (80011758)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シュレーディンガー方程式 / シュレーディンガー作用素 / 点相互作用 / 波動作用素 / レゾナンス / 閾値漸近解析 |
研究実績の概要 |
シュレーディンガー方程式ならびにシュレーディンガー作用素に関する様々な数学的な問題について研究したが、とくにシュレーディンガー作用素が連続スペクトルの下端に特異性を持つ場合に、散乱問題の波動作用素がルベーグ空間において連続となるか否かを重点的に研究した。 1)通常のポテンシャルをもつ3次元シュレーディンガー作用素の場合に波動作用素が指数1のルベーグ空間において連続となるためには零エネルギーレゾナンスが存在しないことが必要十分であることを証明した。これによって通常の3次元波動作用素のルベーグ空間での連続性の問題を完全に解決した。 2)3次元空間での点相互作用を持つシュレーディンガー作用素が零エネルギー固有値を持たない場合、波動作用素は3/2と3の間の指数をもつルベーグ空間において連続、そのほかの指数のルベーグ空間においては不連続となることを証明し、これを用いて時間依存型シュレーディンガー方程式のシュトリカーツ評価を証明した。これはG. Dell'Antonio, A. Michelangeli, R. Scandoneとの共同研究。 3)2次元空間の点相互作用を持つシュレーディンガー作用素のレゾルベントの閾値での挙動は正則型、s-波、p-波レゾナンス型および閾値固有関数型に分類されることを示し、各々の場合にその漸近挙動を決定した。またこの作用素に零エネルギ-固有値が存在しうることを証明し、長く信じられてきたその不存在定理が誤りであることを指摘した。H. Cornean, A. Michelangeliとの共同研究. 4)1次元シュレーディンガー作用素の複素レゾナンスが一様電場による摂動によって安定か・不安定かを解析し,階数1あるいは特殊な有限階数ポテンシャルを持つ場合に複素レゾナンスは不安定であることを証明した。A. Jensenとの共同研究。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
3次元空間点相互作用を持つシュレーディンガー作用素の研究においては SISSA (国際高等研究所、イタリア) のG. Dell'Antonio に加えて若手研究者の A. Michelangeli, R. Scadoneとの共同研究、2次元空間の点相互作用を持つシュレーディンガー作用素の研究ではA. Michelangelo に加えてAalborg大学(デンマーク)の中堅研究者 H. Cornean との共同研究, また複素レゾナンスの安定・不安定性の研究では Aalborg大学のA. Jensenとの共同研究が行えたことが課題の解決に大きく役立った。これが当初の予定以上に研究が進展している理由であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の欄に述べた問題2),3),4)においては重要で興味ある問題が未解決である。 2)、3)においては散乱の波動作用素がいかなる指数のルベーグ空間において連続となるか否かを、作用素が閾値において特異性を持つ場合に解決しなければならない。また点相互作用の強さが変化してレゾルベントの挙動が変化する場合の変化の仕方を決定しなければならない。 4)においてはシュレーディンガー作用素が一般のポテンシャルを持つ場合に何が起こるか決定しなければならない。これらの解決に当たる。 さらにシュレーディンガー方程式の基本解の構造を滑らかさが制限されたポテンシャルに対して決定しなければならない。このほかシュレーディンガー作用素に関しては多くの未解決問題があるのでそれらの解決に努力したい。 本年度の研究において共同研究の重要性を痛感した。海外研究者の招聘、あるいは海外研究者を訪問して共同研究を深め課題の研究を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
1)2016年度には学習院大学長期研修助成金によって研究費を支給されたので、当該研究助成金をほとんど使用する必要がなくなった。 2)2017年9月に実施した研究代表者が主催した「加藤敏夫生誕100年記念国際会議量子力学の数理解析」に相当額の資金を当該研究助成金から支出することが見込まれたため、他の目的ための使用を控えていたが、京都大学数理解析研究所および日本数学会からの支援によって、この会議のためのに当該助成金を支出する必要がなくなったため。
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