研究課題
シュレーディンガー方程式に関する様々な数学的問題を研究した。特に1)無限遠方で二次・一次関数的に増大するスカラー・ベクトルポテンシャルをもつ電磁場中の多体粒子系が強い不連続性をもつポテンシャルによって相互作用するときの初期値問題の解が一意に存在するための最良な十分条件を得た。シュレーディンガー方程式は量子力学の運動方程式でその初期値問題の一意可解性は運動の一意存在と同意義であるが、無限遠方で増大しかつ局所的に強い不連続性を持つ時、解の一意存在のための条件は未だに判然としない。この研究の成果はこの問題の解決のための重要な第一歩である。2)散乱理論の波動作用素の連続となるルベーグならびにソボレフ空間の最良指数を決定した。散乱の波動作用素はシュレーディンガー作用素の関数のルベーグ空間での連続性をフーリエ空間におけるかけ算作用素の連続性の問題に帰着する。このためこの研究の成果は線形あるいは非線形問題において必要なシュレーディンガー作用素の様々な関数の評価に広く応用されている。3)点相互作用をもつシュレーディンガー作用素のスペクトル・散乱理論を研究し、2次元空間におけるレゾルベントの閾値での漸近挙動を決定し、2・3次元空間における散乱の波動作用素が適当な指数を持つルベーグ空間において連続であることを示した。点相互作用をもつシュレーディンガー作用素は核物理学や低温での量子力学において広く用いられているが、そのスペクトル・散乱理論は十分には理解されていない。この研究の成果はこの分野に新たな知見を与えるもので、まだ十分には理解されていない多体点相互作用シュレーディンガー作用素の研究の基礎となることが期待される。4)一様電場内の水素原子の固有状態はすべてレゾナンス状態に転移する。このようなレゾナンスはしかしさらなる摂動に関しはきわめて不安定であることを示し、この分野の常識に警鐘を鳴らした。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
Reviews in Mathematical Physics
巻: 31 ページ: 1950012~1950012
10.1142/S0129055X19500120
Annales Henri Poincare
巻: 20 ページ: 675~687
10.1007/s00023-018-0746-7
Tokyo Journal of Mathematics
巻: 41 ページ: 385--406
10.3836/tjm/1502179271