非線形の拡散現象を記述する放物型方程式に関して、界面と進行波のダイナミクスについて研究を行った。この研究では、界面のダイナミクスについては、比較定理や変分構造を有さない一般の連立系に対して、界面ダイナミクスの縮約系として平均曲率流が現れることを数学的に厳密に示すことを目指している。また、進行波のダイナミクスについて、FitzHugh-南雲方程式、あるいは、類似の方程式の進行波の衝突消滅を数学的に厳密に示すことを目指している。非線形系の拡散現象は、物理学、化学、生物学、さらに近年は金融工学上のモデル等、多くの分野で現れる。それらの中には、急激な状態変化が狭い領域に集中する界面と呼ばれる局在構造が現れて、この界面の示す振る舞いを理解することが非線形現象を解明する上での鍵になることが数多くある。単独、あるいは連立の非線形拡散方程式で記述される拡散現象では、界面の動力学を支配する方程式が、形式的な漸近展開によって、空間内の曲面の発展方程式として導かれている。これらの方程式は、微分幾何学的には広い意味で平均曲率流方程式と呼ばれるものとなる。拡散現象が単独方程式で記述されている場合には、導出の数学的正当化がすでに多くの研究者の努力の結果、ほぼ満足のいく形で成功している。しかしながら、この種の‘数学上の良い構造’を持たない一般の連立系に関しては数学的正当化は得られていない。当該年度は特に、良い数理構造を必ずしも持たない一般の連立系に関し界面運動の支配方程式として、平均曲率流方程式の数学的導出に関するスペクトルの研究を行った。
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