研究課題/領域番号 |
16K05250
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 有祐 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10390402)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 1-交差埋め込み / 完全多部グラフ / 射影平面 |
研究実績の概要 |
「完全多部グラフが射影平面上に1-交差埋め込み可能か?」という問題に対して完全な解答を与えることに成功した.元となる平面の定理(Czap and Hudak, 2012)では,既存の結果(グラフの交差数等)を多数用いた証明が行われていたが,射影平面上のグラフに対してはそのような事実が乏しいためかなり基礎的なところから理論を構築する必要があった.その過程において「1-交差埋め込み可能な完全3部グラフの辺数の上界」を得ることにも成功している.上記の成果を2018年5月に行われる国際会議(JCCA2018)で発表する予定である.また,これらの結果をトーラス上のグラフに拡張すべく研究を継続中である.上記の結果は研究室に所属する渋谷ひかり(M1)との共同研究である. 最適1-平面グラフの再埋蔵に関する論文「No optimal 1-planar graph triangulates any non-orientable closed surface」は,専門誌であるJournal of graph theoryに掲載が決定した.その最終版を作成するため東京電機大学の野口氏と議論を行い,いくらかの修正を施した. また,成蹊大学の松本氏と共に「グラフの積の1-平面性」に関する研究をスタートさせた.そのモチベーションとなる論文(Bucko and Czap, 2015)では“(グラフの)Lexicographic積”に関する議論が行われており「Gと長さ1の道とのlexicographic積が1-平面的であるための必要十分条件はGがcactusであることである」という予想が掲げられている.この予想を解くためには“Key walk”と呼ばれる1-平面グラフの特徴的な構造の再埋蔵を考える必要があり,現在,問題を解決すべく研究を継続中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「完全多部グラフの1-交差埋め込み可能性」に関しては,当初想定していた以上の早さで研究を進展させることができた.「完全2部グラフK_{5,5}が射影平面に1-交差埋め込み不可能である」という事実の証明には多くの議論を必要としたが,当初のものよりかなり簡潔な証明を与えることができている.これらの議論の過程で得られた補題を用いることにより,平面の結果に対してもより短い証明を与えられるものと考えている. 「グラフの積の1-平面性」に関する研究はスタートしたばかりであるが,“1-平面グラフの再埋蔵”に関連のある問題であることがわかってきている.我々がこれまで得てきた結果などを振り返りつつ,予想の解決に向けて新たな理論を構築していきたい. 研究計画には多くの問題が書かれているが,タイミング的に手のついていないものに対しては適切な時期に研究を開始したいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
「完全多部グラフの1-交差埋め込み可能性」に関しては,(“研究実績の概要”にも記載したとおり)2018年5月に行われる国際会議(JCCA2018)での発表を予定している.国内外の研究者からの意見やアドバイスを参考にして,その後,論文にまとめる作業に入る予定である.現在,これらの結果をトーラス上のグラフに対して拡張すべく研究を行っている最中であるが,射影平面上のグラフと比較して多くの場合分けが必要になるグラフが存在することがわかってきている.これらのグラフに対しては,計算機を用いてその1-交差埋め込み可能性を判定することも考えている.そのためには,研究代表者の既存の結果(Eades氏等との共同研究)を精査し,当該問題に使えるように改良する必要があるものと思われる.これらに関しても段階的にその作業を進めていく. また現在,共同研究者であるHong氏らとともに1-平面グラフ近辺の話題を扱った本を執筆中である.その中に,これまでの研究で得られた基礎的な事実(3部グラフの辺数の上界に関する結果など)を今後の研究に生かせるような形でまとめておく. 「グラフの積の1-平面性」に関する研究においては,共同研究者である成蹊大学の松本氏と密に連絡を取り合い研究を進展させていく.
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