研究実績の概要 |
頂点や辺が着色されたグラフに単色の部分グラフを見出す研究は古くからあるが、単色でない部分グラフを見出す研究も活発化している。全ての辺の色が等しい部分グラフを単色部分グラフ、全ての色が異なる部分グラフを虹色部分グラフという。単色や虹色であるという条件は極端すぎるため応用範囲が限られる。虹色部分グラフは、言い換えればどの色も高々1本しか許されないような部分グラフのことである。そこで過去に研究代表者は虹色部分グラフを”色の偏りを許さないグラフ”とみなす新しい視点に気付き、色の偏りの許容範囲を指定できるようにした次の定義を新たに提案した。 定義:各色ごとに許容できる本数を、色集合から非負整数集合への関数g,fによって指定したとき、どの色cの辺もg(c)本以上f(c)本以下しかないような部分グラフを(g,f)-着色部分グラフと呼ぶ。 この定義の下、過去に研究代表者は(g,f)-着色全域木が存在するための必要十分条件を示した。 このような背景のもと、本研究課題では、まず、辺着色完全グラフが丁度m個の連結成分からなる(g,f)-着色全域林を持つためのgとfに関する十分条件を示し、その条件式が、辺着色完全グラフの配色比率と、m個の連結成分からなる全域林の辺数との積に関する条件として表せることを発見した。この結果を発展させ、辺着色完全グラフに自身の配色比率と等しい配色比率を持つ全域木が存在するための必要十分条件を示した。また、どんな辺着色完全グラフにも自身の配色比率とほぼ同じ配色比率を持つ全域木が存在することを示した。さらに、どんな2n頂点辺着色完全グラフ(n≧3)も自身の配色比率とほぼ同じ配色比率を持つ辺素なn個の全域木に分解できると予想し、ある特別な辺着色完全グラフにおいてはこの予想が正しいことを示した。
|