研究課題/領域番号 |
16K05255
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
鈴木 登志雄 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (30235973)
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研究分担者 |
隈部 正博 放送大学, 教養学部, 教授 (70255173)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | 数学基礎論 / 数理論理学 / 計算可能性理論 / ゲーム理論 / 人工知能 / 命題論理 / 最適化問題 / ミニマックス定理 |
研究実績の概要 |
(1) 深さ優先でない探索:AND-OR木についての「独立分布の中での均衡点は独立同分布に限る」というLiu-Tanakaの主張は、一定の条件下でSuzuki-Niida (2015)、Peng et al. (2017)によって正当化されたが、これらの結果は深さ優先アルゴリズムのみを想定していた。深さ優先でないアルゴリズムを考慮に入れても同様の結果が成り立つことを示し、シンガポールの国際研究集会 Workshop on Computability Theory and the Foundations of Mathematics (2017年9月)および日本数学会年会(2018年3月)で発表した。論文は投稿中、プレプリントはウェブで公開中。 [P] Toshio Suzuki: Non-depth-first search against independent distributions on an AND-OR tree. arXiv:1709.07358[cs.DS] (2017) (2) 通信路をもつAND-OR木:木本体と葉が通信路で接続され、高い確率で不通となる計算モデルを考察した。ある葉に問い合わせを行ったら応答があるまでその葉に問い合わせを続けることを深さ優先通信という。このモデル上の独立同分布に対して、通常の設定と異なり、深さ優先探索かつ、深さ優先通信を行うアルゴリズムはコスト期待値を最小化しないことを示し、香港の国際研究集会 International MultiConference of Engineers and Computer Scientists 2018(2018年3月)で発表した。論文は国際会議議事録に掲載された。 (3) アウトリーチ活動:数学基礎論サマースクールを開催し、計算可能性理論の普及活動を行った。鈴木と隈部の両名とも講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画調書の目的1は「NingNing Peng 氏、Yue Yang 氏らの残した未解決問題を解決する。とくに、与えられた確率分布に対して最適な探索アルゴリズムを求める数理的手法を進展させる」、目的2は「深さ優先アルゴリズムのみを扱うという仮定を外しても [Suzuki-Niida 2015] の主定理が成り立つかどうかを解決する」であった。 目的1について:Peng et al. (2017) では今後の課題として「深さ優先でないアルゴリズムの中で最適なものを求めること」をあげている。研究実績の概要欄のプレプリント[P]では「それは深さ優先なアルゴリズムの中で最適なものから選べる」ことを証明した。 目的2について:[P]は目的2を、2分木でない balanced tree の場合も含めて肯定的に解決した。 昨年度末報告書の「今後の方策」について:2017年度末の報告では、今後の推進方策の主要な課題として「Tarsi (1983) の結果を独立同分布以外の独立分布に拡張する」ことを掲げた。 [P]では 、高さ2の2分木についてはTarsiの結果を拡張可能だが、高さ3の2分木には拡張できないことを考察した。 このように、プレプリント[P]において研究計画調書の目的を二つとも解決し、さらに、「研究概要」欄 (2)の論文を発表し、同(3)のアウトリーチ活動も行った。以上により、「当初の計画以上に順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
(1)研究実績の概要欄のプレプリント[P]を、査読付き論文として出版する。 (2)「現在までの達成度」欄で述べた通り、[P]では「Tarsi型の結果を独立同分布以外の独立分布に拡張すること」という構想を、部分的に実現した。2018年度は、この構想をさらに推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:年度末に香港への出張を行うに当たって不足が生じないよう、計画的に予算執行した。次年度使用額は約7万3,000円であり、妥当な範囲と考える。 使用計画:国内での研究発表旅費の一部として有効活用する。
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