研究実績の概要 |
q 元体 F_q 上の長さ n, 次元 k, 最小重み d の線形符号([n,k,d]q 符号)が存在する限界を決定する問題(特に、[n,k,d]q 符号が存在するような長さ n の最小値 n_q(k,d) を求める問題)は、符号理論において最も基本的な研究課題の一つであり、線形符号が拡張可能であるための条件を新たに求める研究とそれを用いた非存在証明、およびコンピュータによる探索や arc や blocking set といった有限射影幾何の特殊な構造を用いた新しい符号の構成が本研究の主目的である。 本年度は、PG(2, 7) の (29, 5)-arc(line と高々5点で交わる 29点集合)の分類を一般化して、一般の q元体上の3重 blocking set(補集合が3次元の最適な線形符号の生成行列を与える)の新たな構成を幾何学的に示し、国際会議 ACCT 2016(15th International Workshop on Algebraic and Combinatorial Coding Theory) で報告した。 また、9元体上の最適な4次元線形符号(n_9(4,d) の決定問題)について得られた結果を取りまとめ、国際学術電子雑誌 Electronic J. Combinatorics に投稿し、年度末に掲載された。未解決問題を含む低次元の n_q(k,d) 表は、研究代表者が管理するウェブサイトで公開しているが、今回の成果を反映させて、新たに q = 9 の場合の表を作成して公表することができた。 更に、4元線形符号が拡張可能であるための符号の重み分布に関する新たな十分条件を求め、国内の研究集会で発表した。この結果は、今後、4元線形符号の存在限界を求めるために利用されることが期待される。
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