研究実績の概要 |
q 元体 F_q 上の長さ n, 次元 k, 最小重み d の線形符号([n,k,d]q 符号)が存在する限界を決定する問題(特に、[n,k,d]q 符号が存在するような長さ n の最小値 n_q(k,d) を求める問題)は、符号理論において最も基本的な研究課題の一つであり、最適線形符号問題(Optimal Linear Codes Problem)と呼ばれる。線形符号が拡張可能であるための条件を新たに求める研究、その研究によって得られた拡張定理を用いた Griesmer 符号等の非存在証明による最適な線形符号がもつ長さの最小値の確定、最適な線形符号のコンピュータによる探索と構造解析、arc や blocking set といった有限射影幾何の特殊な構造を用いた符号の構成等を通して、最適線形符号問題の解決を目指すのが本研究の主目的である。 本年度は、主に4元体上の線形符号の拡張可能条件の研究及び拡張定理を応用した最適な5次元線形符号(n_4(5,d) の決定問題)について取り組み、新たな3-拡張可能条件やいくつかの Griesmer 限界に近い符号の非存在証明が得られた。得られた成果は、それぞれ Finite Fields and their Applications 及び Discrete Mathematics といった国際学術雑誌に掲載された。更に、前年度に発見した最適な5元5次元線形符号の構造解析にも取り組み、有限射影空間の正規有理曲線(normal rational curve)を用いて一般の q 元体上の最適な5次元線形符号の構成に一般化することができた。この成果も Finite Fields and their Applications 誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
3元線形符号や4元線形符号については、拡張定理を応用して、n_3(6, d) や n_4(5, d) の値が未決定な場合の検討を引き続き行う。その際に必要な低次元の最適線形符号の分類や有限射影空間における blocking set の分類については、コロラド州立大学の Anton Betten 准教授やブルガリア科学アカデミーの Iliya Bouyukliev 教授に協力を要請する予定である。また、新たな最適5元5次元線形符号の探索も、大学院生と共に引き続き行う。更に、5元5次元線形符号の非存在証明の一般化についても検討する予定である。未解決問題を含む低次元の nq(k,d) 表は website で公開しており、随時更新する予定である。
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