研究実績の概要 |
q 元体 F_q 上の長さ(符号長) n, 次元 k, 最小重み d の線形符号([n,k,d]q 符号)が存在する限界を決定する問題(特に、[n,k,d]q 符号が存在するような長さ n の最小値 n_q(k,d) を求める問題)は、符号理論において最も基本的な研究課題の一つであり、最適線形符号問題(Optimal Linear Codes Problem)と呼ばれる。線形符号が拡張可能であるための条件を新たに求める研究、その研究によって得られた拡張定理を用いた Griesmer 符号等の非存在証明による最適な線形符号がもつ長さの最小値の確定、最適な線形符号のコンピュータによる探索と構造解析、arc や blocking set といった有限射影空間における(多重)集合の特殊な構造を用いた符号の構成等を通して、最適線形符号問題の解決を目指すのが本研究の主目的である。 本年度は、主に5元体上の最適な5次元線形符号(n_5(5,d) の決定問題)とその一般化について取り組み、一般の q 元体上の最適な5次元線形符号の新たな幾何学的構成方法や Griesmer 限界に達する符号の非存在証明が得られた。その成果は、国内の離散数学や組合せ論に関する研究集会や国際会議 42ACCMCC 等で発表を行った。射影平面の arc や blocking set については、PG(2,7) における (29,5)-arc の分類とその構成の一般化についてブルガリア科学アカデミーの I. Bouyukliev 教授らと共同研究を行い、国際学術雑誌に発表した。また、3元体上の最適線形符号問題にも取り組み、非存在証明に有効な線形計画法的な手法に関する知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
まず、今年度得られた成果を、原著論文として早急に取り纏め、国際学術雑誌に投稿したい。3元線形符号や4元線形符号については、新しい拡張定理を応用して、n_3(6, d) や n_4(5, d) の値が未決定な場合の検討を引き続き行う。その際に必要な低次元の最適線形符号の分類や有限射影空間における arc や blocking set の分類については、ブルガリア科学アカデミーの Iliya Bouyukliev 教授に協力を要請する予定である。また、新たな最適線形符号の探索も、大学院生と共に引き続き行う。未解決問題を含む低次元の nq(k,d) 表は website で公開しており、随時更新する予定である。
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