研究実績の概要 |
q 個の要素から成る有限体(q 元体)上の長さ n, 次元 k, 最小距離 d の線形符号([n, k, d]q 符号と呼ばれる)が存在する限界([n, k, d]q 符号が存在するような長さ n の最小値 n_q(k, d) や d の最大値)を決定する問題は、符号理論において最も基本的かつ古典的な研究課題の一つであり、体の位数 q と次元 k が小さい値の場合でも多くの未解決問題が存在する重要な研究課題である。 新しい線形符号をコンピュータを用いて探索する場合、与えられた生成行列から最小距離 d を求めるのに掛かる時間をできる限り短縮する必要があるが、次元 k が大きくなると、2元体上の場合でも一般の線形符号の生成行列から最小距離 d を求めることは非常に困難になる。本年度は、まず線形符号の重み分布の効率的な計算アルゴリズムについてブルガリア科学アカデミーの I. Bouyukliev 教授らと共同研究を行い、国際学術雑誌に発表した。Bouyukliev 教授によって開発された符号理論の研究用プログラムパッケージ Q-Extension は、このアルゴリズムにより従来より高速に符号の探索が可能になった。 更に、位数の小さい体上の線形符号の最適線形符号問題についても取り組み、3元体上の k 次元線形符号の存在限界に関する予想を立てて、7次元以下で正しいことを証明した。8次元以上についても成り立つと考えられるが、Griesmer 符号の非存在証明が今後の課題である。また、コンピュータを用いた探索により、新しい線形符号の構成等についても、大学院生との研究により、一定の成果が得られた。これらの成果については、国内外の研究集会で発表を行った。
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