研究課題/領域番号 |
16K05258
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
奈良 知惠 明治大学, 研究・知財戦略機構, 客員教授 (40147898)
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研究分担者 |
伊藤 仁一 椙山女学園大学, 教育学部, 教授 (20193493)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多面体 / 折り畳み / 連続的折り畳み / 平坦化 / 剛体折り / 高次元正多面体 / 折り目 |
研究実績の概要 |
多面体の連続的折り畳みに関する問題は凸多面体の場合は解決されていたが,凹凸のある場合については未解決であった.その特別な場合として,直交多面体を拡張したαー多面体についてこの問題を解決し論文発表した。凹凸のある一般の多面体の場合はまだ研究途上にあり,論文発表まで至っていない.しかし,この問題を高次元に拡張した問題や,産業への応用上重要と思われる条件(例えば,「多面体の一部が剛性」)を付加した問題に取り組み,それぞれ結果を得ることができた.産業への応用研究も進んだ(特許申請1件). 1.研究内容:高次元の場合については,超立方体の正方形面(2次元面)が構成する2次元のスケルトンを連続的折り畳みによって任意に選んだ1つの正方形の面上に平坦化できることを証明し,研究発表した(論文は投稿中).条件付き連続的折り畳み問題については,元の多面体の内部だけで連続変形する問題を提案し,特別な立体についての結果を研究発表した(論文は投稿中).産業上重要な折り畳み式製品の開発に工学者と協働して研究発表およびプロシーディングスの論文発表,さらに特許申請1件をした. 2.共同研究者:伊藤仁一氏とゼミを頻繁に開催し,研究討論を重ねることができた. 3.研究発表:Discrete Geometry Fest 2017(ブダペスト)や関連分野のASME2017(クリーブランド)での講演など国際カンファレンスや種々の研究会で多数の研究発表し,招待講演も4件した。社会貢献として,日本数学会の市民講演会での講演などがある。 4.国際交流:この分野の第一人者のErik Demaine氏をMIT(ボストン)に訪問し,引き続きリンケージの問題など幅広く研究討論できた. 5.論文発表:専門誌での論文発表や雑誌への寄稿も多数出版された.現在,投稿中や執筆中の論文も近く投稿・出版予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題である多面体の連続的折り畳みの問題について,凹凸のある多面体としてαー多面体について解決したので論文発表した.また,条件付き連続的折り畳み問題については,いくつかの有用な条件のもとに研究成果が得られた.一つは「内部的折り畳み」について,ある種の多面体で可能であることが示せたことである.もう一つは「一部が剛性」という条件のもとでの研究で,book折りを基本にした結果が得られ,研究発表の準備中である.さらに,発展問題として,高次元の多胞体の2次元面からなる2-スケルトンを2次元面上に連続的に平坦化する問題に取り組んだ.超立方体の場合について解決し論文を投稿中である.他の多面体については検討中であるが,かなり議論がまとまってきた. 応用として,「厚みを考慮した連続的折り畳み」問題に「厚みを無視できる連続的折り畳み」の研究結果を活用し,2本の論文にまとめ,ASME 2017(アメリカ機械学会)で研究発表および論文掲載となった. 異分野との交流も進展し,ヒンジの理論や剛性理論との共同研究や情報交換も進展している.2017年8月末の東京ビッグサイトで開催されたイノベーションジャパンでは「厚板ボックス」や「折り畳みヘルメット」の展示および説明会講演を担当した.さらに,「折り畳み」の産業応用として特許出願1件に至った. 海外との共同研究として,MITのErik Demaine氏を訪問し,連続的折り畳み問題に関連するリンケージの問題に取り組み,部分的解決が得られ,今後も継続研究することとなった. 研究成果の発表については,専門論文誌発表(国際4本)の他に,関連分野への執筆(日本数学会)などがあり,また,日本数学会の市民講演会にて「折り畳みの数理」に関する講演し,その内容を執筆して学会会員誌およびインターネットのホームページに掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
多面体の連続的平坦折り畳み問題を高次元多面体(多胞体)の場合へと発展させ,さらに,「条件(例えば,一部が剛体)付問題」は産業界への応用が期待されるので取り組みを深化・推進する.また,折紙工学との関連も深いことから,他分野の研究者との交流を密にし,研究のより一層多角的なアプローチを図る. 1.研究内容:一般の多面体の連続的平坦化に関して,一つの証明方法の概要はできているが,詳細な検討が残っているので,これを完成させる.「条件付き」連続的平坦折り畳みに関しては,「一部の辺を剛性」「一部の面を剛性」「内部変形」などの問題に取り組み,これらの研究成果を論文や講演等で研究発表し,さらに進展させる. 2.研究交流:共同研究をErik Demaine氏,Anna Lubiew,伊藤仁一氏らとの研究討論・交流を継続する.さらに,日本折紙学会などの関連分野との交流も深化させる. 3.研究発表:種々の集会に出席して研究発表・講演をする.7OSME(International meeting on Origami Science, Mathematics and Education,9月,オックスフォード大),JCDCG^3 2018(9月,マニラ)の国際研究集会など.現在投稿中の論文が4本あり,引き続き論文を専門誌へ投稿する.. 4.研究成果の普及:明治大学「高校生のための講座2018」(8月)での講義,文科省共同利用研究集会の開催(8月)と講演がすでに予定されている. 5.異分野交流:折り畳みの数理を産業へ応用するために,工学者(萩原一郎氏ら)との共同研究を継続するとともに,国際語としての「オリガミ」の分野では芸術・建築・教育など幅広い研究者が活動しているので,それらに関係する学会や研究集会へ出席し,講演を通して研究交流を促進させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の出張旅費にあてる.
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