研究実績の概要 |
頂点数の等しい2つの単純無向グラフG, Hに対して,Gを盤グラフ,Hを石グラフとする石交換パズルpuz(G,H)を次のように定義する.Gの頂点集合からHの頂点集合への全単射写像fをpuz(G,H)の配置と呼ぶ.配置fにおいて,a=f(v)であるとき,盤の目vを石aが占めている,と解釈する.puz(G,H)の与えられた配置fにおいて,uvがGの辺であり,かつf(u)f(v)がHの辺であるとき,2つの石a=f(u)とb=f(v)を交換することができる.つまり,新たな配置gを,g(u)=f(v), g(v)=f(u), xがuとv以外のGの頂点のときg(x)=f(x)と定義すると,fはgに変換できる.この変換をpuz(G,H) の手という.2つのpuz(G,H)の配置f,gについて,有限回の引き続く手によってfからgに変換できるときfとgはpuz(G,H)-同値という. ここで,G=Hとする.Gの自己同型写像fはpuz(G,G)の配置とみなすことができる.Gの恒等写像とpuz(G,G)-同値な自己同型写像全体はGの自己同型群の部分群となる.これをGの石交換群と呼び,Peb(G)と書く.本研究課題ではPeb(G)の基本的性質を調べた.特に「定理1.任意の連結グラフGについて,Gの自己同型群はGの2乗グラフG^2の石交換群に含まれる」を証明した.この証明のキーとなる補題は「補題2.パスP_nの自己同型群はP_n^2の石交換群に含まれる」であり,定理1は補題2を繰り返し用いることにより証明される.補題2は「パスの反転操作」というグラフ上の新たな操作の重要性を示唆しており,この操作の詳しい研究は今後の研究課題といえる.
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