研究課題/領域番号 |
16K05263
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
谷口 哲至 広島工業大学, 工学部, 准教授 (90543728)
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研究分担者 |
宗政 昭弘 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (50219862)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 代数的グラフ理論 / 代数的組合せ論 |
研究実績の概要 |
(1)一般BetheTreeの構造、 (2)ホフマングラフの他分野への応用、 (3)隣接最小固有値(以降、最小固有値)によるクラスタリング、 28年度は主に上記3つについて研究をした。(1)についてその構造は階層的で対称的であるが、具体的な固有値を見ることは大変難しい。先ずは単純に固有値の観点でその構造を特徴付けることが重要である。そこで、当初の問題よりも少し難度を落とし、取り組んできた。グローバーウォークの周期性は具体的なグラフで確かめられている例が少ないようである。計算機実験の結果では周期性を持つとき、その構造が特徴付けられる事が確認できた。 (2)これまでグラフの最小固有値による構造を考える上でのみホフマングラフを利用してきた。そもそもホフマングラフはグラフの最小固有値による極限構造を表しているものであり、グラフの最小固有値問題について研究する時に用いることが自然だからである。しかし、ライングラフの一般化などにも用いられている為、応用の幅は広い。(1)の問題を考える上でホフマングラフを用いることもその分野で重要な問題である。更に、ある一般ライングラフで周期性を持つことを突き止めた。 (3)についてはグラフの最小固有値を固定した時、どの様なホフマングラフが在るのかを考えた時に自然と出てくる問題である。Fat頂点を付け加える作業をするのだが、効率よく付け加えることまでには至っていない。まずは二つに分割することを考えることとした。グラフの固有値、固有ベクトルをみることでその分割が出来るのではないかということをコンピュータによる実験で確認できた。これはスペクトラルクラスタリングと呼ばれる手法と同じようなことで実現出来る。スペクトラルクラスタリングはラプラシアン行列の第二最小固有値にも関わらず、その反対側である最小固有値の固有ベクトルをみてクラスタリング出来るのは大変興味深い現象である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で記述したように、現在3つの項目について研究を進めている。 概要(1)は総ての代数的整数は一般BetheTreeの固有値として現れるという予想の解決を目標に研究する過程で現れた問題である。先ずは一般BetheTreeの固有多項式について、その構造をよく知ることが大事である。それゆえ、かなり順調に進んでいると言っても良い。 概要(2)はスペクトラルグラフ理論の分野で情報収集を行うために取り組んできた活動から生まれた問題である。一言にスペクトラルグラフ理論と言っても分野は広く、まだ横断的な研究が可能な領域である。これまでの研究で、グローバーウォークの周期性を持つ一般ライングラフの特徴付けが得られている。未だ解決していない小さな問題はあるものの、後はそれを論文にまとめるだけである。その第一歩が踏め、ほぼ完成した事は順調と言って良い。 概要(3)はどうしてもクリアしたい問題でもある。本研究における大きな目標は固有値を固定した時にグラフがどの様な構造をしているのかを知ることにある。そのためにもFat頂点を効率よく付け加える手法の開発は解決したい研究の内の一つとなる。現象として固有ベクトルを見ることによる分割の可能性が見つかったことは良い流れだと考える。そして、最小固有値が出来るだけ大きくなるFatの付け方が良いクラスタリングである可能性があるということは、この分野の応用を考える上でも重要な発見である。 以上のことから順調に研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)については、共同研究者の瀬川氏、吉江氏、久保田氏(三人とも東北大)らと、計算機実験で得られたことが正しいのか研究を進める。(2)については、共同研究者の瀬川氏、吉野氏、久保田氏(三人とも東北大)らと研究成果を形にする。(3)については、宗政氏(東北大)と共同で研究を進める。まだ具体的に予想の証明方法が見つかっていないので、継続して研究を続ける。また、上記3つの問題と平行して29年度は次の2つの問題も進める。 (4)最小固有値を-1-√2に固定した時のグラフの特徴付けを更に進める。 (5)ホフマングラフで表せない最小固有値-3以上のグラフの特徴付け・分類。 二つの問題は全く手をつけていなかった訳ではなく、その方針を見つけることが難解であったため、考え続けてきた問題である。(4)について、吉野氏、久保田氏(東北大)と研究を進めているところである。最終的なゴールに繋がる重要な命題を解決出来そうなので、29年度は本格的に取り掛かろうと考えている。(5)については、Koolen氏(中国科技大)、宗政氏(東北大)とこれまでも研究を進めてきた。ルート格子の一般化であるため、問題の解決は容易でないものの、一つだけではあるが、そのようなグラフを見つけている。そのグラフは無限系列ではないところに難しさが残る。基本的には無限系列を見つける。或いは存在しないことを示すということが目標になる。概要(3)の問題の解決は(4)の完全解決に大事な役割を果たすことが予想される。
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