研究課題/領域番号 |
16K05268
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
本田 敏雄 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (30261754)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 変動係数モデル / 加法モデル / Cox回帰モデル / 分位点回帰 / スプライン基底 / 超高次元データ |
研究実績の概要 |
データ収集技術の進歩により、個体数に比べて非常に多くの説明変数が得られるケースが数多くみられるようになり、その種の高次元データと言われるデータに対する統計解析手法の研究が極めて重要になっている。その中でも理論的には指数オーダーの数の説明変数を持つと考えられるような超高次元データに対して統計解析を行う場合には、第一段階として説明変数のスクリーニングを行うことで明らかに不要な説明変数を除き、その後に第二段階として想定された統計モデルについて変数選択の一致性やオラクル性をもつ推定手法を用いるという形の、2段階による方法で統計解析を行うのが標準的となっている。 本研究では主として、変動係数モデル、加法モデルなどの構造をもつノンパラメトリックモデルに対するスクリーニング法の研究、さらに変数選択について一致性を持つ推定法の研究を行っている。 変動係数モデルと加法モデルは、パラメトリックモデルよりは柔軟であるが、いわゆる次元の呪いの影響を受けにくい性質を持つ、重要かつ有用なモデルである。そして本研究では、その二つのモデルを統一的に扱うことができることを示した上で、説明変数のスクリーニング、変数選択だけではなく、変動係数モデルからの部分線形変動係数の特定化、加法モデルからの部分加法モデルの特定化の問題までを扱ってきた。具体的には、B-Spline基底から数値的に正規直交基底を生成し、その正規直交基底によるgroup Lasso法を用いる方法の提案および提案した手法の理論的性質の研究などを行い、実用性のある興味深い研究成果を挙げている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度に、Cox回帰モデルという生存時間解析においてきわめて重要なモデルについて、超高次元データの説明変数を持つ場合のスクリーニング法についての共同研究を開始した。この研究は、Cox回帰モデルにおいて、時間に関する変動係数モデル、インデックス変数に関する変動係数モデル、加法モデルを統一的に扱い、さらにこれらの構造を持つノンパラメトリックモデルからの部分線形モデルの特定化までを扱うという、きわめて画期的なものである。2016年度から2017年度にかけて、国内外の学会でこの研究成果を発表した。そして、国際誌に投稿した論文は改訂後、2017年度に採択、掲載された。 2016年度後半に開始した台湾の研究者との国際共同研究では、近年重要な統計解析手法となっている分位点回帰を扱った。この研究では、データによる重みづけを行ったLasso型のペナルティーによる、説明変数についての変数選択、変動係数モデルからの部分線形変動係数の特定化、加法モデルからの部分加法モデルの特定化を統一的に扱っている。最後の備考にあるように、2017年度に本研究を、“Adaptively weighted group Lasso for semiparametric quantile regression models”というDiscussion Paperにまとめた上で、いくつか国際学会で研究成果を発表し、国際誌にも投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、超高次元のCox回帰モデルおよび分位点回帰という、非常に重要なモデルについて、変動係数モデルおよび加法モデルを統一的に扱うという観点から、主に理論面に重点をおいて研究を行ってきた。基本的な研究テーマおよび手法に大きな変更はない予定である。今後も、変動係数モデルおよび加法モデルの統一的な扱いとそれらの応用という観点に立って、その他の重要な超高次元モデルに関する理論的な研究を行う。余裕があれば、推定値の計算法あるいは実証研究など、より実際的な面に関する研究も行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:国際学会参加の航空券が当初の想定よりやや安価に購入できたこと、2017年夏に研究打ち合わせを行った際に共同研究者の台湾の国立清華大学銀慶剛教授から旅費の援助を受けたことなどで、2016年度の未使用分がほぼそのまま残った形となった。 使用計画:研究は順調に進行しており、今年度も国際共同研究および複数回の国際学会への参加を予定しているので、2017年度までの残額はその際に使用する予定である。
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備考 |
Toshio Honda, Ching-Kang Ing, Wei-Ying Wu. Adaptively weighted group Lasso for semiparametric quantile regression models,Discussion Paper #2017-04,Graduate School of Economics,Hitotsubashi University
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