理工学においては,現象を理解するために数理モデルが作られ,これらのモデルを解くことによって,未知の現象の予測や新たな工学的製品の設計等が可能となる.これらのモデルは解析的な手法で解くことが困難であるため,計算機を用いた数値計算により解かれることが多い.
計算機を用いた数値計算では,その計算は正確には行われない.四則演算の結果はその都度有限桁に近似され,極限を含む無限演算は全て有限演算に近似される.計算結果から正しい結論を得るためには,計算結果の誤差評価を行って,厳密解の存在範囲を確定する必要がある.これを行う方法が精度保証付き数値計算法であり,従来の数値計算の枠組みでは近似解を求める道具であった計算機を用いて厳密解をも捉えることを可能にする.
遅延微分方程式より生ずる非線形固有値問題の解に対する精度保証付き数値計算法を構築する中で得られた知見を活かして,令和3年度に,行列ミッタクレフラー関数,既約非負行列のペロンベクトル,行列の実数乗に対する精度保証付き数値計算法を構築した.この方法についてまとめた論文が令和3年度内に国際学術誌に掲載された.
|