研究実績の概要 |
本研究では、「サポート・ダイナミクス」の一つである「蒸発と拡散を伴う流れに現れる浸透領域(サポート)の変化」を数値的に再現する事と その数学的解析を目的とする。具体的には、境界上に周期的流入・流出を伴う条件を課した時に現れる解のサポートの分離・併合及びその反復性について扱い、このような現象の発生メカニズムを解明する数値計算法を構築することである。当該年度(令和元年度)は Operator splitting methodの考えで構成してきた空間2次元の計算法とサポートの動きを捉える画像表示を改良した上で数値実験と数学解析によって以下の事が得られた。 1 モデル化した初期境界値問題においては 定常解のサポートの補集合即ち零点集合の測度が正になる場合と 零点集合が現れない場合(正の解)が得られる。このことについて 前年度に続いて 数値計算で確かめた。 2 1において その境界条件を時間変化させずに固定した時、時間経過とともに零点集合が以下のように変化する場合がある。最初は空集合 次に2重連結 最後に単連結な定常領域に収束していく。これを画像表示によって見つけ 更にそのような正値初期関数を構成した。 3 2で得られた数値計算について 空間メッシュ幅を十分小にした時も 数値データの安定性とその収束性が確認できた。この現象を Galaktionov-Vazquez(1994)とKersner(1978)の特殊解を用いて証明を試みている。その可能性は十分高いと思われる。 4 更に零点集合が現れる定常解の境界値とそれが現れない定常解の境界値を時間周期的に課した場合 計算結果から次の事が得られた。周期が十分長い時は 解の零点集合の出現・消滅の反復現象が現れ、その周期が短い時には零点集合が現れない。前者については 数学的証明が得られた。 以上3,4を併せた内容としての論文を準備している。
|