研究課題/領域番号 |
16K05273
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
桑村 雅隆 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30270333)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 反応拡散方程式 / 細胞の極性化現象 |
研究実績の概要 |
昨年度から引き続いて、保存量をもつ反応拡散方程式に現れるパルス状局在解が、外部からの摂動を受けてどのように運動するのかを調べた。これは、外部シグナルの影響下で細胞の極性化現象を理解したいという生物学上の研究テーマに関連したものである。本年度は、昨年度に導出したパルス状局在解のダイナミクスを記述する常微分方程式の数学的な正当性を無限次元力学系の理論にもとづいて厳密に証明した。このとき、証明のキーの1つとなるのは非摂動系のパルス状局在解のまわりの線形化作用素の共役作用素のゼロ固有関数を求めることである。そのためは、この共役作用素のゼロ固有関数がみたすべき方程式と、非摂動系のパルス状局在解のまわりの線形化作用素のゼロ固有関数がみたすべき方程式を精密に比較しなければならない。当初の予想よりも時間がかかってしまったが、共役作用素のゼロ固有関数を正確に求めることができた。また、もう1つのキーとなる、ある定積分の値が正であることを比較的緩い仮定の下で証明することができた。この符号が負であると、パルスの運動方向が逆になり、生物学的に矛盾した結果となる。この定積分の正値性の証明にも予想外の時間がかかってしまったが、最終的には厳密に証明することができた。この結果を第43回偏微分方程式論札幌シンポジウム(北海道大学理学部、2018年8月21日~8月23日)で口頭発表し、SIAM Journal on Applied Mathematics vol.78 (2018) , pp.3238-3257 で論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パルス状局在解のダイナミクスを記述する常微分方程式の数学的な正当性を無限次元力学系の理論にもとづいて厳密に証明することができた。さらに、その結果を第43回偏微分方程式論札幌シンポジウム(北海道大学理学部、2018年8月21日~8月23日)で口頭発表し、SIAM Journal on Applied Mathematics vol.78 (2018) , pp.3238-3257 で論文発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
パルス状局在解のダイナミクスを記述する常微分方程式の数学的な正当性を無限次元力学系の理論にもとづいて厳密に証明することはできたのだが、この結果を具体的な問題に適用するためには、いくつかの仮定を厳密にチェックしなければならない。このチェックは、実際にはそれほど容易ではない。今後はこのチェックが容易にできるような具体的な例を探すとともに、パルス状局在解を特異摂動法にもとづいて具体的に構成することを考えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度に研究がやや遅れてしまったために、研究発表のために予定していた旅費が余っている状況である。研究に使用する数式処理ソフトウエアのバージョンアップとやや古くなったノートパソコンの買い替えを考えている。
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