研究課題/領域番号 |
16K05273
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
桑村 雅隆 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30270333)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 細胞極性 / 周期倍分岐 |
研究実績の概要 |
2年前に、外部シグナルの影響下で細胞の極性化現象を理解したいという生物学上の研究テーマにもとづいて、保存量をもつ反応拡散方程式に現れるパルス状局在解が外部からの摂動を受けてどのように運動するのかを調べ、その結果を SIAM Journal on Applied Mathematics vol.78 (2018) , pp.3238-3257 で論文発表した。この論文では、周期境界条件の下で安定な定常パルス状局在解に対して外部からの摂動を加えた場合に、そのパルス状局在解の運動を記述する方程式をいくつかの仮定の下で厳密に導いた。本年度は、外部からの摂動がない場合であっても、安定なパルス状局在解がホップ分岐により不安定化して周期的な振動を起こすことがあることを擬スペクトル法による数値シミュレーションによって確かめた。さらに、このホップ分岐して生じた周期的な振動解が周期倍分岐によって不安定化することを数値シミュレーションとAUTOを用いた数値分岐解析によって確かめた。この周期倍分岐によって新しく生じた振動解は細胞の極性が周期的に反転する現象に対応している。これらの数値シミュレーション結果から、細胞内に拡散の異なる2種類の化学物質があり、その拡散係数に一定の差があれば、初期の一様な細胞から極性をもつ細胞へ発展した後に、その極性が保持されるだけでなく、極性が周期的に振動を起こす現象が観察される可能性があることがわかる。また、細胞極性が周期的に反転する現象が拡散によって引き起こされる可能性があることがわかる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行により、研究集会やセミナーなどにおいて対面での研究討論が不可能になり、研究を進めるために必要な情報を得ることが難しくなった。
|
今後の研究の推進方策 |
保存量をもつ反応拡散方程式において、パルス状局在解がホップ分岐によって不安定化して周期的な振動解が生じることと、ホップ分岐によって生じた振動解が周期倍分岐によって不安定化することについては、数値シミュレーションとAUTOを用いた数値分岐解析によって確かめることができた。しかし、周期倍分岐によって新しく生じた振動解に対応する分岐の枝をAUTOによって追跡することはできなかった。この分岐の枝を追跡する方法を開発したいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行のため、研究集会やセミナーへの対面での参加が不可能になり、出張旅費が余った。新型コロナウイルス感染症の流行が収束すれば、研究集会やセミナーに参加するための出張旅費として使用する。そうでない場合は、研究に必要なコンピュータなどの物品購入費として使用する。
|