研究実績の概要 |
保存量をもつ反応拡散方程式系で双安定な非線形項をもつものの数学的な性質を調べた。非線形項が3次の多項式で表されるモデルについては、安定なパルス状局在解がホップ分岐により不安定化して周期的な振動を起こすことがあることを擬スペクトル法による数値シミュレーションによって確かめた。また、このホップ分岐して生じた周期的な振動解が周期倍分岐によって不安定化することを数値シミュレーションとAUTOを用いた数値分岐解析によって確かめた。このモデルは、Mori,Jilkine,Edelstein-Keshetによって提案された保存量をもつ反応拡散方程式系で双安定な非線形項をもつモデルとは異なる。本研究のモデルは細胞の極性が周期的に反転する現象を理解するためのものであるが、Mori,Jilkine,Edelstein-Keshetによって提案されたモデルは細胞の極性が外部シグナルによって誘導される現象を理解するためのものである。この2つのモデルの違いは、双安定性を支配する非線形項の符号が逆であることにある。それは細胞の極性を制御する2つの化学物質の拡散係数の比が逆になることと同値である。以上の結果を次の査読付き論文で発表した:M.Kuwamura,H.Izuhara,S.-I.Ei,Oscillations and Bifurcation Structure of Reaction-Diffusion Model for Cell Polarity Formation,J.Mathematical Biology.vol.84(2022),article no.22.また、日本数学会2022年度秋季総合分科会(北海道大学)の応用数学分科会において、次の口頭発表を行った:桑村雅隆、細胞の極性化における polarity oscillations と wave-pinning について
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