研究実績の概要 |
最適化理論とゲーム理論の分野において,不動点定理と凸解析を軸に連続構造と離散構造の研究を行い,様々な離散不動点定理を用いて戦略形ゲームや展開形ゲームに対する純戦略均衡の存在性を示した.2020年度は以下の研究成果を得た. (1) 前年度に,集積写像に関するRichard-Shih-Dongの離散不動点定理を用いて,n人戦略形ゲームの最適応答写像が集積写像であるための十分条件を与え,その応用として純戦略均衡をもつ展開形ゲームの新たなクラスの定式化をおこなった.この研究成果は国際シンポジウムのプロシーディングスに掲載されることが決まり,既に原稿の校正は完了している. (2) マルコフ・角谷の共通不動点定理の離散版を与えた.つまり,離散凸解析の2本柱のひとつであるL凸集合からそれ自身への複数個の写像が共通不動点をもつための十分条件を与えた.これは離散凸解析と不動点理論の融合という独創性の高い理論的研究である.研究成果を国内の2つのオンライン研究集会で発表し,2021年に英文誌に掲載されることが決まっている. (3) 中間値の定理をn次元ユークリッド空間に拡張した.その証明にはポワンカレ・ミランダの定理を用いた.ポワンカレ・ミランダの定理は,閉区間[-1,1]のn個の直積集合からn次元ユークリッド空間への連続写像が零点をもつための十分条件を与えたものであり,ブラウワーの不動点定理と同値であることが知られている.アダマール定理はポワンカレ・ミランダの定理に影響を与えた定理で,閉単位球からn次元ユークリッド空間への連続写像が零点をもつための十分条件を示している.本研究では両者を含む形の拡張を与えることに成功した. (1)(2)(3)の研究成果を執筆中の「均衡と極値の連続と離散構造」に約50ページ加筆した.総ページ数は460になった.
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