研究課題/領域番号 |
16K05279
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
今 隆助 宮崎大学, 工学部, 准教授 (10345811)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Leslie行列モデル / 1回繁殖型 / 差分方程式 / 常微分方程式 / Lotka-Volterra方程式 / パーマネンス / 巡回対称性 |
研究実績の概要 |
昆虫の大発生や絶滅のような,自然界の個体数変動のパターンを説明するための理論を構築することは,生態学における重要な目標の一つである.これまで生物の個体数変動のパターンを説明するために研究されてきた生態系モデルの多くは,種内構造を無視している.そのため,種内構造が個体数変動に決定的な影響を及ぼす場合には現象の本質を捉えることが出来ない.本研究では,種内構造をもつ生態系モデルの研究を行う.具体的には,常微分方程式による近似を利用することにより,従来の構造化生態系モデルでは扱いが難しかった振動的な個体数変動に対しても応用可能な理論を構築し,振動的な個体数変動が関係してくる生態学の未解決問題の解決を目指す.
当該年度は以下のことを行った.年齢構造をもつ1回繁殖型の生物の個体群動態は,1回繁殖型Leslie行列モデルと呼ばれる非線形差分方程式で表せる.この差分方程式の解は,巡回対称性をもつLotka-Volterra方程式と呼ばれる非線形常微分方程式の解で近似できることが知られている.しかしながら,その近似の数学的な妥当性については十分には明らかにされていない.本研究では,この2つの方程式のパーマネンスに着目し,その関係を明らかにした.具体的には,巡回対称性をもつLotka-Volterra方程式のパーマネンスが,対応する1回繁殖型Leslie行列モデルのパーマネンスを意味するための十分条件を与えた.1回繁殖型Leslie行列モデルがパーマネンスであるとき,同期現象(繁殖のタイミングの同期)は起こらない.そのため,得られた結果により,生物の周期的な大発生が起こるための必要条件を導くことが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,多回繁殖型の年齢構造をもつ単一種系を近似する準Lotka-Volterra方程式について研究を進める予定であったが,1回繁殖型の年齢構造をもつ単一種系のパーマネンスについての新しいアイデアを得たため,研究実績の概要に述べた研究を進めた.この成果は,「構造化生態系モデルでは扱いが難しかった振動的な個体数変動に対しても応用可能な理論」の構築において有用であり,今後,多回繁殖型の年齢構造をもつ多種系を考察する際に必要となる重要なアイデアを与えている.そのため,「おおむね順調に進展している」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に得た新しいアイデアを発展させ,多回繁殖型の年齢構造をもつ個体群モデルの研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた会議・学会に参加できなかった.また,理論的な研究が進んだため,コンピュータの購入を次年度以降に延期した.
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に参加できなかった会議・学会に参加し,必要に応じてコンピュータを購入する.
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