生物進化をあらわすマルコフ過程として、集団遺伝学でよく用いられるWrightの島モデルを出発点とし、そこに島内の相互作用があるモデルを提案した。このモデルでは、島サイズnが有限であることから、確率的な揺らぎが生まれる。島サイズは有限のままに、島の数が無限に存在する状況を考えると、ある島に発生した1個体の突然変異個体は、永遠にその島にいることはできないため、最終的にその島からは絶滅する。絶滅するまでに、何個体の子孫を残すことができるかを計算することで、n個という有限性が生み出す揺らぎが、島の数が無限個あることによって、ある意味で平均化され、最終的に進化がどのような方向に進むのかを解析している。従来の多くの研究では、島サイズnはすべての島において共通であることを仮定してきたが、本プロジェクトではサイズの異なる複数の島サイズが存在するモデルを解析した。前年度までに開発した数理的手法を応用することにより、非一様な有限島サイズ構造を持つ集団において、各島の繁殖率が異なる場合に、進化的に安定な分散率を解析的に求めることに成功した。その結果、サイズや繁殖率などに非一様性がある場合には、低い分散率が進化しやすいことや、進化的分岐が起こりうることなどを明らかとし、論文発表を行った。
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