研究課題/領域番号 |
16K05284
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
長井 英生 関西大学, システム理工学部, 教授 (70110848)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ベンチマーク / ダウンサイドリスク最小化 / 漸近的最適戦略 / 双対性定理 / モデルの不確かさ / リスク鋭感的微分ゲーム / レート関数 |
研究実績の概要 |
非完備な市場の数理モデルにおいて、確率過程をベンチマークするダウンサイドリスク最小化問題を、拡散過程の2次セミマルチンゲール汎関数に関する最小化確率の漸近問題として定式化し、考察した。その問題とリスク鋭感的確率制御問題との双対性を示すことにより、漸近的最適戦略の構成、並びに最小化確率の漸近挙動のレート関数の表現を得た。その際、問題となる リスク鋭感的確率制御問題の エルゴード型HJB方程式の形式微分の方程式に関する一意可解性定理を示した。その上で、エルゴード型HJB方程式を、ある微分ゲームのHJB-Isaacs 方程式とみなし、そのゲームの均衡を達成する解が決める拡散過程を用いて、問題とするセミマルチンゲール汎関数を表現し直すことにより、双対性定理を得た。また、レート関数の有効定義域の右端点を特徴付ける”大数の法則”が何であるかを明らかにし、具体例でその極限値の明示的な表現を与えた。さらに、その例において、左端点における挙動に関して、ベンチマークが確率過程でない場合と著しい違いが現れうることを示した。そして、この問題を、不確かさを容認した設定で考察し、最悪な状況下において、対象となる2次セミマルチンゲール汎関数に関する最小化確率の漸近問題を定式化した。そして、不確かさを容認しない設定での解析と類似した解析が可能であることを示し、問題となるリスク鋭感的微分ゲームの時間大域的問題との双対性を示した。さらに、レート関数の右端点を特徴付ける、”ロバストな大数の法則”が何であるかを明らかにした。また、具体例において、その右端点の位置を具体的に表現することにより、不確かさを容認しない場合と比べて、不確かさの程度に応じて、右端点が左にずれること、すなわち、不確かさの程度に応じてリスク回避的になることを示した。さらに、左端点には、モデルの不確かさの影響は現れないことも示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実績の概要に書いた通り、予定したように、研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
消費を考慮に入れた最適投資・消費問題をゲーム論的な観点から考察し、また、できれば、モデルの不確かさを容認した設定でも考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
招聘を予定していた研究者の都合と、代表者の都合が合わず、招聘を取りやめたため, 199,010 円を次年度に繰り越す事になった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度からの繰り越し額 199,010 円を29年度交付金と合わせて、次年度に使用し、研究者を数名招聘し、小規模な研究集会を開催する予定である。そこで、当該研究に関連する研究の動向やお互いの研究成果に関する情報交換を行い、到達点の確認を行う。
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