最終年度では、保有資産が予め設定したベンチマークを下回るリスクを最小化する問題を含むような一般的な形に対して、不確かさを容認したモデル設定の下で、考察した。 不確かさを容認しない場合に対して考察した前年度までの研究で、ゲーム論的なアプローチを導入することにより、時間大域的に大偏差確率を最小化する戦略の構成が、見通し良くなされることが明らかになっていた。それは、べき型期待効用最大化問題と大偏差確率制御問題の双対性を、利用して、べき型期待効用最大化を実現する戦略に対応する、拡散過程のエルゴード性を示す際、ゲーム論的問題に変換することにより、古典的なエルゴード確率制御に帰着できるためであった。問題をモデルの不確かさを容認するとき、さらに、もう一つのゲーム論的な要素が加わり、考察すべき問題が複雑になるが、不確かさの度合いを表すパラメータを導入することにより、対応する HJB-Isaacs 方程式をパラメータ付けし、解析することで、不確かさを導入しても、対応するHJB-Isaacs 方程式の解析の障害とならず、類似の解析が可能であることが明らかになった。また、そのパラメータを大きくした極限値が真のモデルに対応する方程式になっていることから、そのパラメーターが不確かさを反映したものとなっていると、解釈された。ロバスト性を表すものといってもよいと思われる。 今後の展開としては、大偏差確率のレート関数の有効領域の解析をさらに進めることにより、リスクの度合いの指針を得るということがある。
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