研究課題/領域番号 |
16K05286
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
嶋作 一大 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00251405)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光学赤外線天文学 / 銀河の形成と進化 / 測光観測 |
研究実績の概要 |
銀河進化の出発点である形成期の銀河はまだ性質がよく分かっていない。暗い上に数が少ないため、観測が難しいからである。その後の銀河進化を左右するという意味でも形成期の銀河は重要である。本研究の目的は、すばる望遠鏡 Hyper Suprime-Cam (HSC) の 2 つの大型銀河探査から得られる多色測光データを使って、赤方偏移 z~2-7 にある形成期の銀河の多数のサンプルを作成し、星形成率、星質量、年齢、総質量 (ダークマターを含む、銀河を構成するすべての物質を合算した質量) を求め、形成の瞬間から 1 億歳に至るまでの銀河進化を明らかにすることである。2 つの探査とは、(1) HSC 戦略枠探査という大型探査と、これを補完する目的で計画された (2) 複数の赤方偏移での銀河探査である。
今年度は、(1) については観測は順調に進み (観測開始は2014年)、赤方偏移 4-7 の銀河について、どの先行研究をも上回る多数のサンプルを作成することができた。このサンプルの詳細と初期成果をまとめた論文を研究グループで執筆中である。(2) については、本基盤研究が始まった後に採択が決まり、今年度は最初の観測が行われた。データは解析中である。観測は来年度も行われる。当初の予定では、今年度は、上記のサンプルから形成初期の銀河を選び出してその物理的性質の推定まで行うことにしていたが、(2) は観測から時間が経っていないためサンプル作成自体がまだであり、(1) についても、サンプル作成に時間を要したために選び出しには至っていない。HSC 以前の装置で取られたデータに基づく遠方銀河や少数の形成初期の研究も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
形成初期の銀河を選び出す際の母サンプルである遠方銀河サンプルの作成が、計画よりやや遅れたためである。母サンプルは2つの大型探査で得られた測光データから作成することになっている。どちらの探査も Hyper Suprime-Cam というすばる望遠鏡の新しい装置による探査である。一つの探査については、観測は順調に行われたものの、対象とする銀河は遠方にあって非常に暗いため、高い測光技術の確立に時間を要し、サンプルの作成が遅れた。もう一つについては、採択が今年度、最初の観測が2017年に入ってからであっため、やはりサンプルの作成が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
利用する2つの大型探査のうち、HSC 戦略枠探査については、最初の遠方銀河サンプルが作成済みなので、これを精査して形成初期の銀河の選び出しを行う。もう一方の探査については、サンプルが作成され次第選び出しを行う。星形成率や星質量などの物理量を推定するには、HSCのデータに加えて赤外線の測光データも必要である。しかしそれらの赤外線データはHSCデータほど解像度が高くないので、赤外で非常に暗いことが特徴である形成初期の銀河について、可視と赤外のすべての波長で整合的に正しく光度を測るのは、実はそう簡単ではない。これは実際に少数のサンプルについて赤外データを扱って初めてわかったことである。これについての対策も検討する予定である。
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