銀河進化の出発点である形成期の銀河はまだ性質がよく分かっていない。暗い上に数が少ないため、観測が難しいからである。その後の銀河進化を左右するという意味でも形成期の銀河は重要である。本研究の目的は、すばる望遠鏡 Hyper Suprime-Cam (HSC) の2つの大型銀河探査から得られる多色測光データを使って、赤方偏移 z~2-7 にある形成期の銀河の多数のサンプルを作成し、星形成率、星質量、年齢、総質量 (ダークマターを含む、銀河を構成するすべての物質を合算した質量) を求め、形成の瞬間から1 億歳に至るまでの銀河進化を明らかにすることである。2つの探査とは、(1) HSC 戦略枠探査という大型探査と、これを補完する目的で計画された (2) 複数の赤方偏移での銀河探査である。
今年度は、(1) については観測は順調に進み、赤方偏移 4-7 の銀河について、サンプルの詳細と初期成果をまとめた論文を研究グループで公表した。(2) については、本基盤研究が始まった後に採択が決まり、現在データを取得しているところであるが、悪天候のために観測は遅れ気味である。以上のデータに加えて、重力レンズを受けて明るく観測された赤方偏移6-9の非常に若い銀河の研究と、HSC以前の装置で取られた若い銀河の研究も行った。それぞれの赤方偏移について、大きなサンプルに基づき、形成期の銀河の存在数、質量、星形成率等を得ることができた。質量の見積もりが比較的正確な赤方偏移2の銀河については、形成期においては星形成の効率 (ガスから星への変換効率) が予想より高い傾向があることを見出した。
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